日本が「人権軽視をしない国でけしからん!」と怒られる日

現代日本版「善悪の彼岸」な感じ。



【南北首脳会談】実務者協議、内容公表せず 金正恩氏の動線議論か - 産経ニュース
歴史的な米朝会談に向けた、最初のステップとして南北首脳会談への打ち合わせが進んでいるそうで。
韓国外相、南北首脳会談で「人権問題は取り上げない」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
政府:拉致問題置き去り警戒 米韓に働きかけ強化 - 毎日新聞
「日本人拉致、交渉するな」=金正恩氏が「特別指示」か−韓国家族会代表:時事ドットコム
北朝鮮の五輪参加を日本が拉致問題で“妨害”?韓国メディアが...|レコードチャイナ
当然、そんな緊張緩和に向けては「都合の悪い」話題も存在するわけで。そして私たち日本としてはそうした空気を読まない都合の悪い話を持ち出すポジションにいる。

この報道に、韓国のネットユーザーからは「五輪を政治に利用するなんて」との批判や、「日本はまるで戦争を望んでいるよう」「日本は朝鮮半島の平和を望んでいないようだ。北朝鮮の核問題は米国、北朝鮮、韓国の3カ国で解決すべき」などと主張する声が上がっている。

北朝鮮の五輪参加を日本が拉致問題で“妨害”?韓国メディアが...|レコードチャイナ

まぁ確かによりグローバルな視点からすれば正論ではあるよね。韓国はきちんと空気を読んで(非核化や戦争回避のためには多少の人権問題なんて無視していい)いるのに、ジャパンはKYやな!


身も蓋もなく言えば、日本は自身のみの『国益』にこだわっている。せっかく南北緊張緩和そして『核なき世界』といった国の枠を超えた大義が実現できる機運が生まれているのに、それを理解しない頑迷な単独主義的な国家であるとすらいえる。
核拡散だけでなく気候変動や移民難民にテロ問題など、現代国際社会を苛むのは「国境を越えた脅威」こそが問題だというのはほとんど誰もが理解しているにもかかわらず、しかしそれが解決できず国連も機能しないのは結局は加盟国たちが自身の国益を優先しているからでしょう。協力の必要性を認識していながらも、自分の国益だけは別だと思っている。アメリカンファースト!


しかしそうした態度は、ほとんどそのまま功利主義的に「大きな利益の為には小さな犠牲は許容する」というポジションでもある。
世界平和の為に拉致被害者たちは犠牲になるべきなのだ。


普段は慰安婦問題なんかを筆頭に「日本は人権軽視国だ!」と批判されていながら、しかしここではより大きな大義の為に「多少の人権問題など無視するべきだ!」と言われているのは正直クッソ愉快な光景だよね。といっても別に今回に始まった話では絶対になく中国やロシアさんなんかは激しく同意しそうな構図で、つまりいかに人権問題が恣意的に国際政治のツールとして都合よく用いられているかの証左でもあるでしょう。
唯一超大国だったアメリカの意向こそが全てだった一極世界から、多極世界へ。その現実という感じ。




もちろんお互いが100%満足することができる合意なら最高だし、あるいは自分だけが100%満足できる解答であれば受け入れるのも簡単ではある。しかしまさか相手を全滅させるまで戦う殲滅戦の覚悟なんて絶対にない以上、私たちは相手のプレイヤーと必ずどこかで妥協しなければならない。
拉致か核か。
平和か敵対か。
いやぁ、むつかしいお話だよね。
だからこの問題って当事者である日韓政府に対しては『無敵の矛』でもあるんですよね。仮に「北朝鮮に強硬姿勢」を採っていればそれに対して「核保有を、戦争を望んでいるのか!」と批判できるし、逆に「北朝鮮に融和姿勢」を取れば「人権問題や拉致問題を無視する気か!」と批判できる。
見事な両面待ち。
――でもそれってそのままその批判者にも使えるカウンターでもあるので、もし確固たる信念『それでも非核が重要である』『それでも拉致解決が重要である』があるならともかく、下手に口に出してしまうとそのままやり返されてしまうので取り扱い注意な戦術ではあります。反政権できれば何でもいいとばかりに、何も考えずに使っている愉快な人たちは結構見ますけど。


国際政治の力学というだけでなく、むしろ上記のような国内政治としての力学こそ重要になってくる。まぁ以前から何度も書いてきましたけども、外交政策は「国内政治を外部に反映させたものである」という構図な以上、私たち有権者の世論や空気感こそがそれを決めることになるのでしょう。「過ちを繰り返さない」と決めている以上、拉致より核がありそうかなぁ。拉致ではそんな碑文はまだ用意できてないしね。


まぁもちろんこんな辛いジレンマなど見なかったことにして「私には関係ない」と判断はエライ人たちに任せるのも精神安定の上では正解かもしれない。
あるいは「核も拉致も同じように重要だ」とか実質何も言ってないに等しい平凡なことを口にしてお茶を濁すこともできる。こちらもよく見る光景だよね。


千載一遇の機会としてやってきている北朝鮮融和ムードへの態度について。私たちは何を第一に優先すべきなのか? 政権にどういう対応を望むのか?
みなさんはいかがお考えでしょうか?