オバマさんちの家庭の事情Ⅱ

Opinion & Reviews - Wall Street Journal
とうとう強引な手法しか残されなくなったオバマ大統領の現状を皮肉った社説。
使命感に燃えた真面目な政治家であればあるほど、っていう感じなのか。皮肉な話ではあるけれども。

 一連の選挙での敗北とオバマ政権の医療保険改革法案のひどい不人気のため、民主党はリベラル派の宿命――党派的な投票によって僅差(きんさ)で強引に議会を切り抜ける道――に突き進まざるを得なくなっている。

 彼らがこの改革は国民のためになると信じ、今を逃したらヨーロッパ型の福祉国家を築くチャンスは二度とないかもしれないと恐れるがゆえに、伝統的な上院の規則を著しく乱用する形で法案の通過が図られる見通しである。

 オバマ政権が使用しようとしているのは、「調整手続き(reconciliation)」とよばれる議会審議の方法である。これは財政赤字を削減する手段として、議事妨害を防いで予算案を迅速に可決するために1974年に導入された。この手続きが適用されると、審議時間が20時間に制限され、上院で必要な票は50票になる。同数となった場合には副大統領に決裁権があるからだ。民主党共和党も過去に頻繁にこの方法を使って予算法案を通過させていることから、民主党医療保険改革法案にこれを使うのは問題ないと主張している。

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核の無い世界だとかキャップ&トレードだとか、オバマ大統領の目玉政策は色々語られてはいるものの、実際本当に目玉としているのはこれなんですよね。医療保険改革法案。小泉さんにとっての郵政改革法案みたいな、オバマ大統領にとっての医療保険改革法案。
だからこの法案を通す事にはどんな強硬手段も排除しない。
しかしまぁ「民主党はリベラル派の宿命――党派的な投票によって僅差(きんさ)で強引に議会を切り抜ける道――に突き進まざるを得なくなっている」というのはなんというか適切な物の言い方だなぁと思う。確かにその「継続性に挑戦するリベラル」という概念は、多くの場合において、強引で際どい方法に頼る事になる。大抵は、継続性に挑戦する変化、というものに大衆は疑惑の目を向ける。
実際うちの国でもやろうとしてこのまま進むのか折れるのかの瀬戸際な感じです。だめそう。


実際、民主党内でも賛成者の少ないこんな法案を政治的生命を掛けてまで無理してやる必要があるのか、と言うのは正しい現状認識なのかもしれない。しかしオバマ大統領はそうは思っていないらしいと。
初の黒人大統領、というだけでは満足できなかったのか。むしろ、それ故に、という感じなんだろうか。
まぁ将来、「黒人」ってだけで他には何も無い大統領だった、とか言われるのは確かにキツイけど。けどまぁ傍から見て、それって某ブッシュ大統領と何が違うの? と言う感じではある。
しかしそれでも、彼はそれに掛けている。国民とためと信じて、自分の政治生命を危険に晒してでも。

 調整手続きは医療保険改革法案の可決に必要な票数を確保するための最後の手段である。民主党はスノウ上院議員にも、他の共和党員にも、そして民主党内の何十人もの議員に対してさえも、この政策を受け入れさせることができないでいるからである。この荒っぽい政治権力の行使は、リベラル派たちがここまでくるのに使用しなければならなかった数々の汚職収賄――「コーンハスカー・キックバック」(医療保険改革法案への支持と引き換えにネブラスカ州に多額の補助金を出すという約束)や労働組合員への特別な税優遇などと軌を一にしている。

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WSJではその覚悟を、数々の汚職収賄労働組合員への特別な税優遇、と変わらないような最後の手段だと。僕もこの記事で初めて知りましたけど「調整手続き」ってそこまでの代物なのか。
結局のところ、身も蓋もない言い方をすれば、オバマ大統領は国民の理解を得られなかった。そしてその事実故に、こうした最後の手段を持ち出したと。
しかしまぁ最大の悲劇は、これを通しても(その強引な手法故に)非難を免れないし、もし失敗(あるいは諦めても)しても更にオバマ大統領の死に体・レームダック化が鮮明となってしまう点だと。進むも地獄下がるも地獄。


そしてこうした強引な手法が生み出すものは何かといえば、当然、強い反発というわけで。それは例えばティーパーティー運動のような。*1
つまり、そんなオバマさんちの家庭の事情から私達が読み取れるのは、(それが良いか悪いかはともかく)いわゆる「ネトウヨ」のような過激な保守派を生むのは、こうした過激なリベラルであると。彼らこそが生みの親であり育ての親であるという事が良く解る事例。
勿論逆の意味でも。