悲しきチキンゲーム

ということで船長が釈放されて話題沸騰中のあれ、のお話。しかしダブルピースて。


さて置き、以前の日記でも書きましたけど、昔の偉い外交官だった幣原喜重郎さんの本『外交五十年』の中でパナマ運河の通行税に関する米英間の問題で、イギリス在米大使ブライスさんが言い放ったのお言葉を思い出します。

「いいえ、もう抗議は一切しません」
「どんな場合でも、イギリスはアメリカと戦争をしないという国是になっています。抗議を続けていけば、どういうことになるか、それは結局戦争にまで発展するほかはありますまい。戦争をする腹がなくて、抗議ばかり続けて、なんの役に立ちましょうか。それはわれわれが恥をかくに止まります。」

その意味で、この問題の下でどちらが先に折れることになるかといえば、ほぼ確実に日本でしょう。
別に日本には中国と戦争になってまで押し通すような、重要な問題ではないから。もちろんそうした問題が真に在るか無いかどうかはまた別の議論にはなるけども、しかし少なくとも今回の船長釈放の問題についてはそうでないと確実に言えるから。
じゃあ逆に中国側からするとどうなんだろうか?
というとまさに日本よりもずっと本気なわけで。国内はそれはもういつか「攘夷→倒幕」*1に進化しかねない国民と、いつか本気で独立運動をしかねない少数民族を抱えているし。
同様に国外では「日本の選択が同じ問題を抱える東南アジア諸国に不安を与えた」と言われるように、まさに中国にとってのその裏面が意味するのは「もし日本に負ければ、同じ問題を抱える東南アジア諸国でも不利になる」と考えざるをえない。


こうして国内国外に日本とは別次元の問題を抱える中国は、もちろん(少なくとも今は)戦争にまではしたくはないと思っているけども、それでも日本と較べれば中国のブレーキポイントはずっと遠くにある。その意味で、いつか日本が必敗してしまうチキンゲームではあるんですよね。日本と中国は掛けている物が違うから。ブレーキ踏む地点が全然違うから。


結局今後の問題としては、こうしたチキンゲームがいつまで続くのか、という辺りでしょうか。究極的にはこの程度で済めば別に負けた所で大した問題はない。でも真に恐ろしいのはチキンゲームがより激しくなっていくことだから。しかし「今の状況で満足しているか?」という命題に対して、中国がNOと答える限りチキンゲームは拡大していく。だって勝てるんだから。


まぁこうしたチキンゲームの失敗例が無数にある過去の戦争であり、満州事変の大日本帝国やラインラントのナチスドイツだったりしたという事は、忘れない方がいいですよね。