「現実主義者たちの遊び場」な国際連合

最近気付いたんですけど、なんというかそうした悲劇で無力な国連って、理想が敗れてかつての敵にいいようにされてしまうヒロイン像っぽくてなんかえろいと思うんです。悪堕ちとか寝取られとか。く、くやしいでも略。僕が国連ネタ好きなのはそういうことだったのか! と今更ながら目から鱗です。きっと同じ趣味な人があと数人位は居ると信じてる。


http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2011030500099

【ニューヨーク時事】国連安保理常任理事国の特権は第2次世界大戦の結果として定まっている。改革交渉で影響を与えられることがあってはならない−。中国の王民国連次席大使が安保理改革交渉の非公開会合で、こう発言していたことが4日分かった。
 国際情勢の変化を反映した安保理改革の必要性は、国連加盟国間で幅広く共有されており、中国の「過激」な発言は物議を醸している。
 会合は2日、国連本部で開かれ、各国代表が演説。関係者によると、王民次席大使は、米英仏中ロの常任理事国5カ国に与えられた特権の「正統性」を強調し、常任理事国増加に事実上反対を表明した。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2011030500099

へーという感じです。へー。まぁ言いたくなる気持ちも解らなくはないけども、でもそれを実際にぶっちゃけてしまうのが中国さんのすごいところではありますよね。
さて置き、日本では何故か未だに国連幻想がすごい蔓延しています。しかし最近のリビア関連での国連の無力さを見ても解るように、なんというか『国際主義』とはかけ離れた所にある現状。じゃあ一体今国連はどこにあるのかといえば、それって古き良き「力の均衡」な現実主義そのものであるんですよね。まさに大国がお互いに身動きが取れなくなっていることこそ、平和の証であると。
その意味でこの中国さんのあまりにもぶっちゃけすぎた発言ではあるんですけど、しかし国連という構図を『勢力均衡』という視点から見るとまぁ確かに言っていることはそれなりに正しいとも思うんです。常任理事国の増加は、そうした勢力図を塗り替えることに繋がりかねないから。だからある意味で現実主義者であればあるほど、(国際主義的な性格を持つ)国連本来の機能へと改善しようという努力、つまるところ安保理改革に及び腰になっているのが現状なんだと思います。
かつて国際主義によって現実主義という悪弊を克服しようとした国際連合は、現実主義の象徴でもあるバランスオブパワーの現代における舞台となってしまった。すごい皮肉で愉快な話ではありますよね。まぁそれさえも冷笑的な人からすれば、初めから*1失敗は決定付けられていたと仰るんでしょうけども。

国連関係者は「中国の発言は改革が進みつつあることへの焦りの表れではないか」と指摘。「反対するにしても論拠がまずい」といった声も上がっている。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2011030500099

しかしこの発言はほんと的確です。「反対するにしても論拠がまずい」と。それは勿論かつて中国がその席を持っていたのは国民党でもあるわけで。
でももっと致命的なのは、そんな貴族的な生来の「特権階級故に」なんて発言したらすごいマズイからですよね。最近の中東や北アフリカの騒乱だって、そうした特権階級の固定構造を民主的に打破しようとするからこそ正しいと支持されているわけで。「そんな永続的な特権は民主的に改革されていくべきである」と、それこそが改革派の正統性そのものなんだから。民衆の革命直前に空気読めない発言をする独裁者たちそのままにしか見えない。
「反対するにしても論拠がまずい」ええまさにその通りでございます。なんというベタな悪役なんでしょう。

*1:そもそも最初に国際機関を唱えたカントさんの理念では「自由で共和的な諸国の連盟の元に、永久平和はなされる」と言っていたわけで。だから初めからソ連や中国がそのメンバーに入っている時点で機能するはずがない、とはよく言われるお話。