「今こそチャンスである」とは誰も言えない

やったね地球ちゃん、温暖化ガスも減るよ! な原油価格高騰のお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5566
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5595

 石油消費は世界の国内総生産GDP)の約5%を占めており、価格は最近20%上昇してきた。このため、フルクラム・アセット・マネジメントのギャビン・デービス氏は、最近の価格高騰は石油への支出総額を約1%増加させ、その分、石油以外のモノやサービスに対する需要を減らすと試算している。

 突然思いがけない収入を得る産油国が、手にしたカネをほかのモノやサービスに使うのであれば、これは問題にならない。その効果は世界的な所得再配分だからだ。しかし、石油消費国と比べると、石油生産国は概して所得を消費に回す割合が低いため、原油高はほぼ間違いなく世界需要の減少につながる。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5566

まぁ今更ですけど、昔から多くの人に言われてきた事実ではありますよね。つまるところ、原油価格の急騰は世界経済にマイナスの効果を与えると。勿論経済収支的には単純に輸入国から輸出国へと所得が移転するだけ、という見方はできるんだけど、でも上述の通り結果的にはマイナスの効果が勝つ。
でもそれって「まともな」石油生産国にとっては極当たり前の行為ですよね。というかむしろ先進国こそが、将来の為に貯蓄しておく等の行為を推奨してきた。もっとまともで堅実な使い方をするべきだと。だって馬鹿みたいに浪費されて国家として弱体化・不安定化しても困るのは結局その国だけでなく、輸入している国にとってもだから。そうした地道な啓蒙によってこうした構図は完成されると。悲しいお話ですよね。


さて置き、何故か現実にそれが起こっているときは皆それどころじゃないのかあんまり直接に指摘はされませんけど、原油価格高騰がもたらすものってそうした経済的な影響ばかりじゃないんですよね。
実は地球温暖化対策に誠実だった人たち - maukitiの日記
以前の日記でも書いたけど、原油価格が高騰すればするほど、世界経済が停滞すればするほど、結局の所、世界全体として排出される温暖化ガスは減る。やったね!
勿論それは直接的に経済活動の鈍化によって減る、という面もあるし、そして緊迫した状況下にあるからこそより創意工夫をして省エネルギー化が進むという間接的な面も存在する。それは例えば石油ショックの教訓によってエネルギー効率の高い社会を一心不乱に目指した日本のように。


一時は環境保護の為に「温暖化ガスを減らすべきだ!」なんて声が挙がるわけだけども、でも実際にそうした事態、まさに現在のような経済危機になってしまうと、私たちってそうしたことを忘れて何故か真逆の事を口走ってしまう。「世界的な経済危機? やった! 温暖化ガス減るね!」なんて誰も言わなくなる。地球温暖化対策って本質的に(少なくとも今の私たちが生きている間は)経済的な打撃を避けられないものなのに。
それなのにガソリンの値下げを望むし、そして経済が上向きになることを望んでしまう。
こういう私たち自身の愉快な面を考えると温暖化ガス削減運動って、別に京都議定書とかCOP十幾つとかの失敗を見るよりも、多分成功しないんだろうなぁと暖かい気持ちになります。そりゃそうですよね、誰だって先の見えない将来よりも、今生きている現在こそが重要なんだから。

 しかし、ここにも一縷の希望があるかもしれない。中東以外の世界は、ついに、石油と中東に依存する自らの弱点と向き合うことができるかもしれないのだ。なすべき課題は、電気自動車へのインフラ投資や炭素税など、既によく分かっている。
 1970年代の石油ショックは、世界経済を一変させた。2011年の石油ショックも、同様の結果をもたらすかもしれない――しかも、1970年代当時より小さな代償で。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5595

ということで、実際にこうした危機あるいはチャンスに到来しても、精々こんなぼんやりとした結論になってしまう。「かもしれない」と。経済も地政学も温暖化もどれも重要であって、私たちはそのどれか一つでのみ生きているわけではないから。そしてまぁ大抵の場合、より優先されるのは私たちの「豊かな生活」の維持であると。
がんばれみらいのひと。