中国さんちの玉突き遊び

まぁ「遊び」とは言うものの本人たちはいたって真面目に考えているんでしょう。その辺の認識差が実はやっかいなのかなぁと。


オピニオン】南シナ海で「ビリヤード」行う中国 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
さすがマイケル・オースリンさん面白いこと仰いますなぁ。

 南シナ海で中国はビリヤードを行っているが、米国が行っているのはある種の旗取りゲーム。中国にとってビリヤード球をテーブルから落とすことが目標になるが、米国は中国に地域覇権という旗を取らせないようにゲーム運びをしている。
 米国の政策立案者は、中国側とは違うゲームをしていることを認識した上で戦略を練り直す必要がある。ゲームをビリヤードにシフトすることは米政府にとって挑発的になり過ぎるが、現在の傾向が続けば、南シナ海を安定化する米国の役割を維持する上でこのエイトボールのビリヤードでは、ほとんど選択肢がなくなることに気付くかもしれない。

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『ビリヤード』という言葉を彼はここで使ってらっしゃいますけど、国際関係でそれが使われる場合って、主に極端な『現実主義』を揶揄するときにそういった表現が用いられるんですよね。
つまり、もっとも過激な形のリアリズム・現実主義では、しばしば、それぞれの国家をビリヤードの球のように捉えるわけであります。国家は単なる球であって、球は自らの内部的な意思で独自に動くのではなく、外部的な物理現象によってのみ動く事になると。故に「意思ではなく能力に備えろ」と教えるわけです。まぁ言ってしまえば古きよきバランスオブパワーなお話ではありますよね。
といっても現代においてここまで極端な現実主義政策をとる国はあまりない。当たり前ですよね。もうそんな古典的な勢力均衡はWWⅠの時に失敗に終わったのだから。


しかし中国という国家は現代でも伝統的な現実主義政策、ロシアやアメリカや時には日本に対して、そのイデオロギーではなく、その能力を基準として接近や敵対を繰り返してきたわけです。勢力を均衡させて自らの国家の生き残りを図ろうと。
そして最近に至り、強い力(パワー)で周囲の球を押し出せば当然それらの球は引き下がるに違いないと考え、彼らは行動に移している。確かにそれは中国自身にとって、本来あるべき、勢力均衡であるわけです。自分たちが強大になったのだから、その均衡点は後退すべきであると。それは善悪の問題ですらなく、単純な物理法則でしかないのだと。そんな中国さんちの玉突き遊び。故にマイケル・オースリンさんは懐かしの『ビリヤード』なんて表現を用いたんでしょう。
勿論中国の行動を口だけで止められるなら何の問題はないんだけれど、しかしそんなことはこれまでの結果を見る限りありそうにない。最終的には中国に対抗するにはアメリカも同様に、球を押し出されないよう反対から押し返すしかない、と。


そんないつもの中国脅威論の一つではありますけど、うまい表現方法だなぁと思います。