「豊かな人々はいいのです、したいようにできるのですから」

盛り上がってたダライ・ラマ先生のお言葉について。どう見ても皮肉なのに、斜め上な反応が多かったの少しだけ。


脱原発だと「貧富の差広がる」 ダライ・ラマが記者会見で述べる (1/2) : J-CASTニュース
まぁこうした日本人の(空気を読まずに質問する)振る舞いをバカにする方もいらっしゃるんでしょうけども、しかし別に今更はじまったわけでもないわけで。やっぱり今回のことにしても、ダライ・ラマ先生の言葉に対して賛成派にしろ反対派にしろ、つまり私たちは『えらい人が正解を言ってくれる*1』こそを求めているからだと思うんですよね。
だからこうした偉大なるダライ・ラマ先生のお言葉を頂戴した時に、そのポジティブな反応は「さすが良いこと言うぜ!」であるし、逆にネガティブな場合は「やっぱり実はコイツ大して偉くないんじゃね?」というものになるのです。「ダライ・ラマが何を言おうが(俺たちのやり方には)別に関係ないだろ」という反応にはほぼならなずに、むしろ「その偉い人のお言葉に倣うこと(あるいは発言者自体を否定すること)」が前提として話が進んでしまう。故に、それが私たちの御眼鏡に適えばそれは好意的に受け取るし、しかし気に入らないものあればその「偉大なる」という部分から否定に入るのです。
そして御用学者だのエア御用学者だのとバカみたいな争いが始まるのです。すごくなんだかなぁと暖かい気持ちになってしまいますよね。
でも仕方ないよね、いつだって私たちは攻略本が欲しいし、行列を作るのが大好きだし、なるべく失敗したくない、と思っている典型的日本人なんだもん。


とまぁ薄っぺらい日本人論はともかくとして、本題。
今回のダライ・ラマ先生の発言って最近どっかで見たなぁと思ったら、ビル・ゲイツ先生が少し前にほとんど同じ事を言っていたんですよね。彼は、先進国で広く行われている一般住宅の屋根に太陽光発電パネルを設置することを非効率で「子供だまし」と断じた上で、次のように述べていました。

豊かな国はお金が余っているからよいのです。われわれは医療に大金を払い、エネルギーや衣服を浪費し、食料価格を操作してきました。しかし地球上の80%の人々は経済的な見地からエネルギーを購入します。

Q&A:ビル・ゲイツ、世界のエネルギー危機について語る|WIRED.jp

「ダムは自然を破壊するなどの悪影響がある。風力、太陽エネルギーもあるが、十分ではないかもしれない。十分というのは、『先進国にとって十分』ということではく、これから発展を遂げる国にとっても十分でなければならない。そうでなければ、貧富の差が広がってしまう」

脱原発だと「貧富の差広がる」 ダライ・ラマが記者会見で述べる(1/2):J-CASTニュース

別に私たちが原発に否定的になったのは、原発に疑問を持っていない国々よりも道徳的に優れているからとか賢いからとか、そうした理由じゃないんですよね。ぶっちゃけてしまえば、私たちは「金が余っているから」こそこんなことができるのです。確かに、自分たちだけが気持ちよく生きていける、という点においては『反原発』という流れは間違ってはいないのです。そしてそんな自己中心的な意識にしたって、現状ある世界の貧困問題を見れば別に殊更に批判される話ではありませんよね。そして現実にやっぱり『脱原発宣言』をしたのは金持ち国家ばっかりなわけだし。
「俺たちには金があるから好きなようにやる権利がある」
ええ、まさにその通りです。


上記ダライ・ラマ先生にしてもビル・ゲイツ先生にしても、そこに肯定や批判の意見を主に込めているわけでは勿論ありません。彼らはただ、事実を事実として述べているだけであって、是非の問題ではないんです。私たちは「あなたたちは選択の余地があるのですね」と指摘されているに過ぎないのです。
まぁ遠まわしな皮肉であることは間違いありませんけど。

*1:ここでの「えらい人」は権力者という意味ではなく、広い意味での(高潔な)有名人・著名人であります。