核保有国であるが故に焦るイスラエル

昨日の日記のタイトルである「持たざる者の強さ」を書いた時、じゃあ逆に「持っている者の弱さ」って何だろうと考えた際にふと連想した、まさに「持つが故に弱い」なイスラエルさんちのお話。



http://www.cnn.co.jp/world/30005581.html
イラン大統領「核開発で近く重要な発表」 革命記念日で演説  :日本経済新聞
懲りずになんかものすごく煽っているイランさん。コワイお話ですよね。まぁその発表で驚愕するせよ、あるいは肩透かし食らうにせよ、ともあれ今のうちに適当なことを言っておこう日記。数日待ったけど今日まで発表なかったのでいい加減待ちきれなかった日記。


Closer to take-off - Israel and Iran
/ WSJ日本版 - jp.WSJ.com - Wsj.com
ということで皆さんご存知のようにイランの核開発疑惑をめぐってそれはもう大盛り上がりなわけです。
インドでイスラエル大使館の車爆破、グルジアでも爆弾見つかる| マネーニュース| 最新経済ニュース | Reuters
なんか公然と暗殺合戦*1とかやってるし。
そしてその中心が『ホルムズ海峡の封鎖』と『(イランの核兵器保有に伴う)イスラエルのイラン攻撃論』という点であるわけですよね。まぁぶっちゃけてしまえば私たち日本だけでなく、アメリカや欧米各国にとってさえも、少なくとも短期的には前者のほうがどう考えてもヤバいわけですけど、しかしイスラエルにとってはそうではない、という両者のポジションの違いこそがこの問題をめんどくさくしているのでした。そこに更にタイミング良く(悪く)シリアのアサド政権の問題も同時に絡んできて、おそらく本国の方で折れない限りイランはシリアへの援助も止めないだろうとか、ほんとうもうややこしやーな状況でありますよね。


では、そもそも何故イスラエルにとってはイランの核兵器こそが悪夢であると考えているのでしょうか?
――その答えについて突き詰めて言ってしまえば、イスラエルが核保有国であるからこそ、という皮肉な点にあるのでした。
未だによく誤解されている考え方に「最小限の核兵器は国防にとって廉価で効果的な形態である」というフランス核戦略の祖であるピエール・ガロワ将軍*2から始まるそれがあります。でもこれって全く逆だったんですよね。つまり、できたばかりの小規模な核戦力は、むしろ敵の先制攻撃を招くのです。著名な核戦略研究者だったアルバート・ウォルステッター先生*3はこうした点を拡大抑止力という議論の中で説明してみせました。安定した均衡=核の平和とはお互いに第二撃能力*4が保障される状況にあってこそ達成されるのであって、それが出来ない場合は全く逆の状況を招いてしまうと。
まぁ言われてみれば当たり前のお話ではありますよね。合理的な判断として先制攻撃が容認される状況。だからこそ、皮肉にもイスラエル核兵器を持っているが故に、敵対国の先制攻撃を私たちが想像する以上に恐れているのです。私たち日本以上に小さな国土では、その安定した『第二撃』なんてとても無理だから。そしてだからこそ、彼らは先制攻撃こそを重視しているのです。
イスラエル「生存戦略しましょうか?」 - maukitiの日記
結局のところ、追い込まれているのはイランであると同時にイスラエルにしても同様なんです。イランがもし核兵器を持てばイスラエルは攻撃せざるを得ない状況に「追い込まれて」しまう。国家の生存の為に、やられるまえにやるしかないのだ、と彼らは追い込まれつつある。
かくしてウォルステッター先生の理論は今日において、まさに現実の構図として見事に証明されてしまっているのでした。小規模な核戦力はむしろ不安定を増大させると。小規模の核戦力は先制攻撃を招く。いやぁおっそろしいお話ですよね。