国家繁栄の分かれ目はどこにある?

成功例はともかくとしても、どうしたら失敗するか、という知見は結構ありますよね。人類は伊達に失敗しまくってきたわけじゃないぜ! なお話。



なぜ国家は失敗する? : 地政学を英国で学んだ
このお話を見ていて、
何が国家の繁栄を決めるのか? - himaginary’s diary
少し前の同じ本を扱った上記記事の時になんとなく考えながらモヤっとしたけどまとまらずに日記のネタにするのをスルーしていましたけど、なんとなく角度が見えた気がします。
つまり、そもそもこれって結構当たり前のこと言ってるんじゃないのかなぁと。国家の繁栄を決めるのは『制度』が重要である、まぁ確かにその通りなんでしょう。でも確かダグラス・ノースさんらの新制度派経済学の中でも似たようなことを言っていた気がします。名誉革命が転換点だったとか、ノースさんもそんなお話してましたよね。他にも開発経済の失敗の歴史――ハロッド=ドーマー的にただ資本だけを投入しても解決しない――等によって、その辺のことはもうかなり経験的にも明らかになっているわけで。ソマリアやらリベリアやら、良かれと思って開発援助したら見事に『制度』の構築に失敗して、ザ・失敗国家となった国々について。実際そうした知見自体は結構もう語られてきたお話ではないかなと。
そんな制度主義なお話をはじめて体系的にまとめたお話なんだ、と言われたらごめんなさいするしかありませんが。


その意味では、この辺も結構ありふれた結論ではないのかとは思います。

●アセモグルによれば、アラブ諸国アフガニスタンに足りなかったのは民主制度であるという9/11事件後の見方は間違ってはいないという。ところが間違っていたのは、それを簡単に輸出してそこに根付かせることができるはずだ、というわれわれの考えのほうであった。

●民主的な変化というのは、どうしても草の根的な下からの運動からわき上がってこなければならないものだからだ。

なぜ国家は失敗する? : 地政学を英国で学んだ

結局のところ、内部の人たちが「変えよう」と考えなければ外部から幾らやっても無駄だった、というのはアフガニスタンイラクの惨状を見れば同意するしかありませんよね。ちなみにフクヤマ先生なんかは著書『アメリカの終わり』の中で、現代の「民主的な変化」の成功例(ミロシェビッチ政権の崩壊、バラ革命オレンジ革命など)には次の3点の特徴があると指摘しています。

    • 民主化の主導権が社会の内部から出ていて、且つそれらが団結していること。
    • 外国からの支援が機能する為に必要な、曲がりなりにも『選挙』という体裁が採られているか、現政府が(それなりに)市民団体や政治団体を容認していること。
    • 現地の民主化勢力が欧米からの支援や援助に拒否反応を持たないこと。

中国やロシアや北朝鮮など、いつまで経ってもそれが始まらないのは、やはりこうした要因が欠けているからなのかなぁと。



さて置き、「国家内部にある政治制度の性質こそが重要である」ってぶっちゃけシュトラウス先生から繋がる伝統的なネオコンの人たちそのまんまではあるんですよね。彼らはそこからもう一歩進んで「故に世界に民主主義を広める必要がある!」と息巻いてしまうわけですけど。この辺のことがどこまで言及されてるのか気になりますけど、個人的にやっぱり好きなお話ではあるので、日本語版が出るのを期待しております。