泥沼一歩手前

とは言え、いつまでたってもアキレスさんの亀の如く延々と「一歩手前」を繰り返している感じではあります。


時事ドットコム:シリアがトルコ軍機撃墜=「領海上空を侵犯」と主張
トルコ:空軍機がシリア沖で墜落 撃墜の報道も− 毎日jp(毎日新聞)
やっちゃいましたなぁ感がすごい。
しかしまぁ幾ら現代における集団的自衛の権化たるNATO様におかれましては、アメリカからヨーロッパまでほとんど全員一致で「勘弁してくれ」と思ってること間違いないので、これが何かより多数にかかわる国際関係の問題となるかは微妙ですよね。それでも尚、こうした所に突破点を見出す以外に方法がないのが現状のシリアの悲しい所ではありますけど。


ということで無力な国際社会に頼るのではなく、今後に意味のありそうな展開の一つとしては、トルコさん側が本気でシリア反政府側にとっての『聖域』を提供する気があるのかどうか、という点なのでしょう。
やはりこうした戦力差が決定的な非対称戦・ゲリラ戦では『弱い側がどれだけ安全地帯を持てるか』という点が鍵となるわけであります。そしてそうしたものは国境線の向こう側にあるのが最も手っ取り早くて効果的であると。それはベトナム戦争の時のラオスカンボジアであり、ダルフールでのチャドとスーダンであり、アフガニスタンの時のパキスタンであると。国境線を使ってヒットアンドアウェイする人たち。まぁこんなことは19世紀の植民地戦争の頃からやっている伝統的な戦略ではあります。「よく解らないが、あるラインを超えるとアイツらは唐突に追いかけるのをやめてくれる」な現地住民たち。
ともあれ、そんな聖域をトルコ―シリア国境の向こうにできることを許容する所までいくのか。現状としてはまだトルコさん側は公然と武器供与の段階まで至っていないので、そこが変わらない限りやっぱり変化はないのかなぁと。


けどこうした効果的なやり方は、それはもう泥沼な展開をしばしば呼び込んでもしまうんですよね。戦争ではないけれど事実上の戦争状態。不正規戦争。そんな曖昧な状態だからこそルールやら何やらほとんど無視されてしまう構図ができあがってしまう。上記ダルフール地方なんて、そんなチャドとスーダンの両者による反政府活動支援と聖域化で、あそこは人類史に残るような大量の難民と民族浄化の現場となってしまったのでした。


まぁ幾ら戦闘機が撃墜されちゃったとは言え、そのままトルコさんにそんなリスクを負えなんて言うことも当然できないので、やっぱり何も変わらずに誰もがドモホルンリンクルの如くシリアを見守るだけ、というオチになってしまうんだろうなぁと。
解っていて敢えて無視する私たち。初めから無関心なのとどっちがマシなのかと聞かれると困ってしまいますよね。