欧州連合懐疑派たちの英雄、その死

あれから25年。果たしてそれは慧眼だったのだろうか?


英国のサッチャー元首相が死去、87歳 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでサッチャーさん死去だそうで。20世紀も遠くになりにけり。
以前の日記でも少し触れましたが、首相時代の彼女は徹底的に「反欧州連合」のポジションでありました。まさに彼女の栄光の首相時代を終わらせることになったのは、「人頭税の導入」によって国民からの反発を、そして「欧州共同体への強硬な敵視」によって身内の政治家たちから見放されることになったことが、最終的な原因でした。

そして、サッチャー首相は欧州共同体(EC)を強化する動きを、ナショナリズムの立場から感情的に攻撃する姿勢を強めた。ブリュッセルに怪物のような官僚機構が登場し、自国の主権を奪おうとしていると罵倒した。とくにヨーロッパ通貨統合の計画に怒りをあらわにした。この計画が実行されれば、ドイツがヨーロッパ全体に対する覇権を握ることになるとみていたからだ。*1

いやぁ、見事に現在のヨーロッパの姿を的確に示唆していますよね。
しかし25年前の当時にはこうした彼女の「ヨーロッパ統合」への敵視は、まったくありえない事だと思われていました。イギリスは統合過程に影響を与え、孤立すべきではない。ところがサッチャーさんはこうした真っ当な(と思われていた)意見にまったく聞く耳をもたず、そして身内の支持を失っていくのです。



とある英雄の死、それは信奉者たちにとっては、死後益々カリスマ性=利用価値をもってしまいそうだなぁと。イギリスさんちも近い将来国民投票があるのに大変ですよね。
もし晩年の彼女が認知症でなかったら、現在の欧州連合の惨状を一体どんな風に見ていたのかなぁと考えてしまいます。

*1:『市場対国家』上 P205