グローバル化がもたらす『女性解放』

それ以外に一体どうすればそれが実現できるというのか。


バングラデシュ、18の縫製工場を閉鎖 ビル崩壊で欧米企業離れ懸念 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
ビル崩壊事故の死者1000人に、バングラデシュ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37715
そういえば事件当初に日記のネタにしようと思っていたものの、GWを挟んだせいで見事に忘れていたバングラディッシュのビル崩壊のあれ。ミシンと発電機でビルがぶっこわれるとか共震こわい。
バングラデシュのビル倒壊とグローバリゼーション: 極東ブログ
極東ブログさんでネタにされていたのを見て思い出したので、便乗して適当に。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア支部幹部ジョン・シフトン氏は、ウォルマートのような小売業者は「組合労働者を厄介者と見なす」傾向があると指摘する。だが、バングラデシュでは、労働運動家――そして労働者自身――は潜在的な問題に関して、経営者たちよりも優れた情報源になり得る。
 アパレル業界は、バングラデシュが中所得国になるための障害を乗り越えるうえで大きな役割を果たせる。また同業界は、女性解放が争われているイスラム国家で平等を促す力でもある。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37715

まぁそういうことなんですよね。日本でも少なくない人がまるで諸悪の根元のように批判するグローバリゼーションではありますが、しかし、じゃあ貧しい国々を通り過ぎればいいのかというと、そんなことまったくない。
女性たちの繊維工場での労働について。
もちろんそれは低賃金であり、長時間労働であり、粗末な作業場であり、権利は制限されている劣悪な労働環境ではあります。その一例が、今回あったバングラディッシュのビル倒壊であると。こうした劣悪な環境は、それこそ200年前に産業革命の始まったイギリスからヨーロッパ、150年前のアメリカ、そして私たち100年前の日本からその他アジア諸国に至るまで、ほとんどどこでもどんな時代でも同じことを経験してきました。
こうした構図をして「まるで進歩のない私たち」というグローバリゼーションに批判的な人々の言葉は確かに正しいのです。
――しかし、それでも、時代を通じて受け継がれ共有してきたモノってそれだけじゃないわけで。
つまり、上記イギリスから始まった産業革命とその伝播の流れは、ヨーロッパでも、アメリカでも、日本でも、その他のアジアでも、ほとんど同じ確信をも共有してきたのです。
「農村の暮らしよりずっとマシ」という確信を。


幾ら批判されるべき点があろうとも、現状のグローバリゼーションはこの一点において、擁護され維持していくべきなのです。
低賃金でありながらも、しかし個人として独立し、自らの選択と決定権を保証するこの(低賃金の)労働こそが、いつの時代も伝統的な農村の生活から女性たちを解放し、そして自立の第一歩としてきたわけだから。
産業革命がもたらした偉大な遺産の一つは「女性解放」だ、という意見があるのも頷ける話なんですよね。
こうした搾取労働こそが、女性に経済的自由と自立への最初の第一歩をもたらしてきた。
ふつうの男性が忌避するようなキツイ仕事でも、しかしそれでも農村でひたすら畑を耕す「だけ」の人生よりは選択の余地があるだけずっとマシだからと。この微妙なライン――男性は忌避するもののしかし農村暮らしよりはマシだと受け入れる女性――こそが、結果として、元々選択肢のなかった女性たちを解放してきたのです。


――なので、後進国で酷使される女性たちを救おうと、低賃金の搾取工場から撤退しろ、とまったくの善意から叫ぶ人たちは実はまったく逆のことを叫んでいるんです。もちろん今回のバングラディッシュの事例のように最低限の権利や環境は保護するべきですし、また強制労働のような形態であれば当然対応を採るべきでしょう。
しかしそれが現地における伝統的な農村での生活よりも「マシ」な生活を提供してくれているのならば、逆に黙って容認するべきなのです。そこで女性たちは(男性にはない)その従順さと忍耐をもって、彼女たちにしかできない仕事を始めて手に入れることができるわけだから。
この道こそが、現在先進国と呼ばれる国々がほとんど必ず通ってきた道でもあるのです。そうやって女性たちを社会的・経済的に解放することで、その国家は工業化への次のステップへと進むだけの近代的な社会基盤を手に入れることができる。
そしてそれが全国に行き渡った後、工場はまた賃金の安い国へと移っていく。もちろんこれも酷い話だということはできますが、しかし、だからこそ、イギリスから始まったこの流れは世界中の国々に広まっていったのです。工業生産は常に労働力の安価な地へと移っていく。


いやまぁ根っからの男根主義者であったり、永遠に後進国は豊かになるべきではないというユニークな思想の持ち主ならば、別に「撤退しろ!」と叫ぶのは間違った行動であるとは言えませんけど。
ということで、やはり「後進国での搾取工場をやめろ!」と反グローバルなことを無邪気に叫ぶ人を見かけたら、女性は永遠に家庭とムラに縛られているべきだ、あるいは後進国は永遠に貧しいままでいるべきだ、なんて愉快なことを信じているんだなぁと生暖かく見守ってあげればいいと思います。