「銃教育」についての是非

「初めてのライフル」で妹を射殺、相次ぐ悲劇に揺れる米社会 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
【図解】米国で販売される子供向け銃 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
難しい問題ではありますよね。単純に銃議論というよりは、もう一歩先の「銃社会における教育のあり方」というお話について。まぁもちろんバカげているという言い方もできるでしょうけども、しかしじゃあ――銃が現実に存在している中にあって――子供に対して「正しい銃の扱い方」を教えない方がマシなのか、と言われると困ってしまいます。
米国での銃による暴力件数、1993年以降に大幅減=独立調査機関 - WSJ.com
実際、こうして『子供向けの銃』が発売され広まっていく中にあって、アメリカにおける「銃による暴力件数」は減少しているわけで。見方によってはこうした銃教育が効果が上がっていると言えるかもしれない。なくもなくない。

 ピュー・リサーチセンターはまた、銃による暴力に対する国民の認識についても調査し、過去数十年間に国民の見方は現実と大幅にかけ離れていることが分かった。

 この調査の執筆者らは「拳銃による暴力問題への国民の関心にもかかわらず、米国民の大半は銃の絡んだ犯罪が現在、20年前よりも減少していることを認識していない」と指摘した。

 ピュー・リサーチセンターが今回の調査に伴い実施した世論調査では、米国民の56%は銃を使用した犯罪が20年前よりも増加していると確信していることが明らかになった。減少していると考えているのは12%にとどまった。

米国での銃による暴力件数、1993年以降に大幅減=独立調査機関 - WSJ.com

より銃被害が少なくなっているので、報道における希少性が上がっているのだ、と言ってしまうとまぁ身も蓋もありませんけど。




これだけじゃアレなので有名な『ヤバい経済学』*1からの引用。

8歳の女の子がいる親御さんを考えよう。女の子の名前は、そうだな、モリーという。彼女には仲のいいおともだちが2人いる。名前はエイミーとイマニで、近くに住んでいる。モリーの両親はエイミーの家に銃があると知っていて、エイミーのおうちで遊んじゃないけないよと言い聞かせている。だからモリーは代わりにイマニのおうちでよく遊んでいる。裏庭にプールのある家だ。モリーの親御さんは娘を守るべく正しいことをしたと思い、安心している。
ところがどっこい、データを見ると、ご両親の選択はぜんぜん正しくない。アメリカでは、1年間に家のプール11000個あたり子供が一人溺れている(この国にはプールが600万個もあり、10歳未満の子供がだいたい毎年250人溺れている)。一方、銃のほうは、100万丁強あたり1人の子供が死んでいる(銃は二億丁あると推定されていて、毎年銃で死ぬ10歳未満の子供はだいたい175人だ)。
プールで死ぬ可能性(1万1000個あたり1人)と銃で死ぬ可能性(100万丁強あたり1人)では比較にもならない。モリーがイマニの家のプールで溺れて死ぬ確率は、エイミーの家で銃で遊んでいて死ぬ確率の、だいたい100倍である。

いやぁ、監視の無いプールっておっそろしいなぁ。
銃に一切触らせないで子育てするのと、プールに一切触らせないで子育てするの、将来的には一体どちらが生存率が高くなるのでしょうね?


ちなみにこうした幼児の溺死問題は、私たち日本でもこれは他人事ではないんですよね。

交通事故以外では溺死に注意
*交通事故以外の不慮の事故死率*


【1〜4歳】
1位.不慮の溺死/溺水・・・・・ 34.8%
2位.不慮の窒息・・・・・・・・29.5%
3位.煙・火/火災への曝露・・・ 13.1%


【5〜9歳】
1位.不慮の溺死/溺水・・・・・ 56.7%
2位.不慮の窒息・・・・・・・・12.2
3位.煙・火/火災への曝露・・・ 17.8%

http://seikatsurisk.com/1598_1.html

10歳未満の子供の死因は一位の『交通事故』に続いて、二位は『溺死』であります。特に5~9歳の間では「(おそらくアメリカの一般家庭に設置された監視員のいないプールと同様の)自然水域での溺死」はダントツであります。
そして上記で書いたように、アメリカでも銃による死ぬ可能性よりも溺死の方が高い。私たちはアメリカで販売されている「子供用の銃」の存在を笑っている一方で、しかしやはりアメリカの親御さんと全く同様に、(数字を見ると実は『銃』よりもずっと危険なはずの)「溺死の危険性のある場所」で幼い子供を遊ばせている。
――でもまぁそんなものですよね。私たちはほとんど被害に遭うはずもないテロ攻撃を恐れてしまうし、一般車での交通事故よりも万が一の飛行機事故を恐れてしまうし、あるいは放射能のリスクを過大評価してしまう。


いつだって非合理な私たち。でも仕方ないよね、だって人間だもの。

*1:P188