伝統的価値観を愛する人たち

好きの反対は嫌いではなく、無関心なんだよね、というあるあるでベタなお話。




痛いニュース(ノ∀`) : 【画像】 東京都・世田谷区の成人式に暴走族が乱入→壇上に上がって大暴れ - ライブドアブログ
【衝撃】東京都・世田谷区の成人式に暴走族が乗り込む→壇上に上がって大暴れ - NAVER まとめ
ということで今年も愉快な成人式であったそうで。うん、まぁ、言ってしまえば毎年恒例のことなので今更言うこともないなぁと思っていたんですが、「(成人式なのに)バカな子たち」と笑うだけじゃ寂しいので、なんとなく適当なことを思いついたのでこちらもいつも通り適当なお話。



「荒れる成人式」はいつごろからあったのだろう
花魁風着付けの新成人が叩かれる風潮にあらぶる私の様子。 - Togetter
花魁的なファッションの是非はともかくとして、しかし確実に言えるのは、そんな派手な装いの女子と同様にああして立派な袴姿をしている男子側にしても、彼らはどちらにしてもカネと手間暇を掛けて『成人式』というイベントに臨んでいる、という事実であるわけですよね。
――でも実際のところ比率でいえば、個人主義が蔓延する現代社会にあって、そもそも成人式そのものに出席しなかったり、あるいはせいぜい無難なスーツで出席だけして旧い友人たちとの再会目当てで即帰る、という人たちの割合は確実に一定数存在しているわけで。ほんとうに成人式に興味がなければそうするのがごくごく自然な対応であるはずなんですよ。どうせ毒にも薬にもならない市長やら区長の話を聞いておわりじゃないか、というのは概ね正しい。


ほんとうに無関心であれば、そもそも妨害なんてする必要なくて、イベント自体がなくなろうが続こうがどうでもいいはずなのに。
ところが成人式で暴れるような彼らはそうしない。逆説的に、彼らはその『成人式』という――伝統があるかはどうかはともかくとして――公的なイベントに重要な意味を付与しているからこそ、ああして入念な準備を欠かさない。そして天の邪鬼な形で、あくまで「一般人とは違うやり方」でそれに意気揚々と参加する。大多数の参加者と言えば、「とりあえず」「参加することに意義がある」「友人の付き合い」とばかりに消極的参加なはずなのに。
その意味で、ベクトルこそ違えど、その熱量の大きさとしては実は一般の参加者と同じか、あるいはずっと『成人式』に熱心であると言えるんですよね。もちろん妨害・迷惑行為に走る子たちがすべてそうした熱心さと共にやっているかというとそうでもなくて、ほんとうにタチの悪いその場のノリや酔っぱらいやらがいることもあって、個人的にはそっちの方がずっとタチ悪いとは思いますけど。


地方自治体による伝統的イベントを無価値だと考える人びとと、参加するだけの意義があると考える人びと。
むしろ『成人式』という地域社会に関わる性質を考える上で、長期的に問題になるだろう構図はこちらの方だと思うんですよね。そんなアウトローな参加者たちは、健全な社会であればむしろどこでもいつでもある程度の割合で存在するものであるわけだし。おそらく、こうしたイベントに良くも悪くも熱心な人たちは、同じく伝統的価値観を重視する方向から地域社会との付き合い――お祭りなどにも熱心に参加することでしょう。しかし一方で、そもそも無関心な人たちはそんなこと考えもしない。
こうしたことを考えると、しばしば指摘される、ヤンキー的な価値観を持つ人たちが将来の保守派層を形成する、という議論になるほどなぁと同意してしまいます。それはつまり、社会における伝統的な行事を重要視する人びとでもあるわけだから。こちらもしばしば指摘される「都市と田舎」の差異の一つは、単純に居住地域の違いと言うよりは、こうした価値観の違いであるのです。



そんな風に見ると、彼らの愚行も多少は微笑ましくは――あんまり見えませんね。