「安心してください、市民の味方ですよ!」な二番煎じ感

それってやっぱり前回同様に典型的なポピュリストの手法のひとつでもあり、だからこそ効果的であるので賢い成功戦略とも言えるんですけど。


「SEALDs」メンバーらシンクタンク設立 NHKニュース
へーシンクタンクですって。そんなんで学生でも給料貰えるならすごくうらやま、いやけしから――やっぱうらやましいです。

安全保障関連法に反対する活動を続けている学生など若者のグループ「SEALDs」のメンバーが、大学教授や弁護士とともに「市民のためのシンクタンク」という団体を新たに作り、今後、政策提言などを行っていくことにしています。

「SEALDs」メンバーらシンクタンク設立 NHKニュース

ともあれ、また前回と同じようなレトリックを使っているのが賢いというか、愉快というか。
「普通の人びと」的な分類を使い、自らをその擁護者であるというポジションを明確にする冴えたやり方。まさにそのような手法を一般には『ポピュリズム』というんですが、実際の政治家たちと同様に道義性の問題はともかくとして、しかしやっぱりある程度までは効果的であることは確かだよねぇと。


結局、その市民って誰のことなの?
民衆、有権者、労働者と何が違うの?
しかしその中身について敢えて言わないのがポピュリストたちの大戦略でもあるわけですよ。彼らはそうして「善悪」や「普通の人びとと傲慢なエリート」となんとなく恣意的に分割しては、自らの正当性を劇場のように演出する。「市民のため」と謳うことで自らのポジションを、エスタブリッシュメントに阿った既存シンクタンクと差別化=既存政治への正しいカウンターとして演出しようとしている。

ポピュリズムとは「普通の人々」と「エリート」、「善玉」と「悪玉」、「味方」と「敵」の二元論を前提として、リーダーが「普通の人々」の一員であることを強調すると同時に、「普通の人々」の側に立って彼らをリードし「敵」に向かって戦いを挑む「ヒーロー」の役割を演じて見みせる、劇場型政治スタイルである。

大嶽秀夫先生なんかは『日本型ポピュリズム』の中でそんな風に仰っているわけで。君たちこそが真の市民であり、有権者であり、正義ある民衆である。「そして私こそがそんな普通の人たちの代弁者である!」なんて。
最近のトランプさんやルペンさんなんかでも見られる、ポピュリストたちの典型例。


ということで今回もまたそうした「市民のため」とかいう言葉が含まれているのは賢い戦略の二番煎じであると同時に、まぁ昨今話題となっている内外の政治状況を考えるとなかなか愉快な光景ではあります。でもほとんど直接に団体名でぶっこんでいるのは潔いとすら言えるかもしれない。
しかし今回のは多分に宣伝目的もあるのだろうし仕方ないよね。なんとなく定義が曖昧で大きなこと=市民のためだと言っておけばいっぱい顧客リーチするだろうし。ぶっちゃければそれ以上の意味があるかというと、多分ない。そんな無意識っぽい振る舞いにこそ、結果としてポピュリズムな手法に行き着いているのがより面白い人たちだなぁとは思うんですが。
その意味で、まぁ確かに彼らは民主主義の申し子かもしれない。


ともあれ、でも政権獲得を事実上の党是にしていた民主党の『以後』の政策の悲惨さっぷりったらないので、こうしたシンクタンクが生まれるのは良いことなんじゃないでしょうか。まぁもし本当に彼らと連携したらそれはそれで(既存のシンクタンクは何をしていたんだという意味でも、ほぼ素人の彼らと組んで大丈夫なのかという意味でも)恐ろしいお話ではありますけど。


当日記はそんなポピュリストっぽさをまるで隠そうとしない潔い「市民のためのシンクタンク」を応援しております。