ヨーロッパの道徳的帝国主義のおわり?

ヨーロッパ市民は結局自分たちのことしか考えられなかったオチ。


「理想郷の夢」は諦めるべき=EU大統領 - BBCニュース
うーん、まぁ、そうね。概ね言っていることは正論だとは思いますけども、ぶっちゃけちゃったなぁと。

欧州連合ドナルド・トゥスク大統領は1日、加盟国の統合をさらに深化させるという「理想郷の夢」は諦めるべきとの考えを示した。
トゥスク氏は、欧州委員会EU首脳は国境管理の強化や銀行同盟といった現実的な措置に注力すべきだと述べた。

「理想郷の夢」は諦めるべき=EU大統領 - BBCニュース

ヨーロッパにある(と信じている)普遍的価値観を広げてのヨーロッパ統一を目指すのではなく、とりあえずは経済面での共通のルール造りに専念しようと。


まぁそういう方向へ舵を切ろうとする気持ちは解りますよね。現在起きているのは、彼らが目指していたはずの基本的な『人権』という概念が結局はヨーロッパの外からやってくる人たちには適用できなかった、っていう彼らの市民意識というモノの限界が明らかになってしまったから。
元々他の大国たち(ロシアや中国ひいてはアメリカまで)に対してのヨーロッパが自らの優位性として誇ってきた一つが、ICCなんかを筆頭に、こうした『人権』分野でもあったのにね。今後スタンダードになるであろう国際法の中心はヨーロッパが担うのだ、なんて。国際的というよりは超国家的な政策の広がりを目指していたはずのヨーロッパは、見事に難民対応でそれに失敗した。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016060100005&g=int
もちろん何から何まで失敗したというわけではないし、彼らが夢見ていたはずの善意溢れる対応もまったく無かったわけでもない。ただ、こうしたパリ市長の行動が「例外」として見られてしまう点が象徴してしまってもいる。それとは逆に多くの結果として起きているのはむしろ極右政党台頭などの少なくない有権者からの「NO!」でもあったわけで。


ということで彼の言葉はとっても素晴らしい正論ではあります。ただ一つの欠陥――そもそも「経済分野」での共通ルールも、まだ記憶も新しいギリシャでズッコケたばっかという点に目をつぶれば。
だからこそメルケルさんなんかは「経済統合に代わる」ヨーロッパ統合の象徴の一つにしようと、ああして難民対応でイチかバチかの掛けにも出ていたのにね。
【図解】地中海を渡る移民 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
どうにか陸路はトルコで「足止め」に成功したものの、次々と地中海の海で沈んでいく難民たち。
それこそ難民対応での失態をICCに「人道に対する犯罪」として起訴されたらどうするんだろうね? 彼らが進めようとしていた普遍的管轄権という概念に反対なアメリカロシア中国は「ざまぁwww」感すごいだろうなぁと。
「ヨーロッパに彼らを救う責任はない」と言ってしまえばそれで終わりのお話ではあるもの、それはそれで彼らが目指してきたポジションの一つは確実に失われることになる。


ヨーロッパのこうした態度を責めることは(まさか日本人である僕が)できないし、公平に見れば現実主義に即した行動とも言えるわけで。なので個人的には、自分たちの陣営・地域・国さえよければ他はどうなってもいい、というある種の多極化時代の始まりを告げるイベントになるのかなぁと。
「世界の警察」としてのアメリカが消えつつあるように、ナチスの後に「人権の実現」を目指してきたヨーロッパの終わり。


みなさんはいかがお考えでしょうか?