リベラルもつらいよ

反米と平和主義を叫んでいれば良かった時代に戻れればいいのにね。しかしもうそういう時代ではなくなってしまったのだ。



97歳の村山富市元首相「頑張ってよ」 枝野氏を激励:朝日新聞デジタル
こ、これは懐かしの『リベラル政権を創る会』じゃあないか!

立憲民主党枝野幸男代表は11日、社民党の初代党首の村山富市・元首相(97)と大分市内で面会した。枝野氏は、1994~96年に自社さ政権で首相を務めた村山氏に対し、「先生がお元気なうちに、もう一回リベラルな政権をつくります」と決意を語った。

97歳の村山富市元首相「頑張ってよ」 枝野氏を激励:朝日新聞デジタル

でもまぁ村山政権の誕生で一定の成果は出したものの、その自民党政権に伍するはずの「リベラル勢力の結集」というのは、まぁ結論として見ればまったく失敗してしまっているよねえ。それが村山さんの責任だとは個人的にはまったく思いませんし、むしろ現在においても目指すべき雛形としては割と成果があったとも思いますけども、しかしまぁ現実はご覧の有様ですよ。


もっと言えば、単純に国内的な勢力争いという点だけでなく、1994年当時と比べて現代の国際関係を見るとまぁ『リベラル政権』でいることってすごい難しそうだよねえとしみじみ思うんですよね。
――それはもちろん中国という大問題がある故に。
その意味で1994年というのは冷戦が終わり、『平和の配当』による軍縮とともに唯一超大国となった横暴なアメリカにただ苦言を呈していればリベラルっぽくいられた、まぁものすごく牧歌的な時代だったなあと。


リベラルの源流にある欧米的価値観の自由主義が目指す「自由」「人権」「寛容」「正義」といった目標を掲げる時、それはまぁ現代中国のアレやコレやとコンフリクトするのは間違いないわけでしょう。
まるで一昔前の(それこそ世界中のリベラルたちが横暴なアメリカを批判していた時代にもせっせと反中国を叫んでいた)反中ネトウヨのように、アメリカではなくまず真っ先に中国を批判することになる。
2021年においては、アメリカやヨーロッパ諸国が既にその深刻なジレンマに直面しているように、リベラルな政権を目指そうとすればするほど現代中国との決定的な対立が避けられなくなっているわけで。
中国のフィリピン軍攻撃、米国に条約上の防衛義務=米国務長官 | ロイター
最早トランプの暴走だなんて言っている場合ではなくなってしまった、今のバイデン政権なんてその典型例でしょう。
リアリストを気取って中国国内人権問題など知ったことではないとぶっちゃけてみてもいいし、あるいは我らが日本国憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」いるから何もしなくてもセーフなのだ、とトンデモなローカルルール理論を振りかざしてもいいですけど。
どちらにしても、それを言ってしまったら上記『普遍的(ここ重要)』価値観を目指すはずのリベラル政権の自殺だよね。






ちなみに、この現代世界における中国との距離感に悩む『リベラル政権のジレンマ』とまったく同じ構図に陥っているのがイスラムな人たちで、半ば両極端に居そうな両者そろって同じ悩みを抱えている構図ってすんごい面白いと思うんですよね。
中国国境に達したタリバン、内政干渉は回避か - WSJ
つまり、米軍もアフガニスタンからもついに撤退することで、少なくとも現時点ではどう考えても無辜のイスラム教徒たちを世界で最も弾圧しているのは、ウイグルでの現代中国でもあるわけでしょう。
しかしそこで単純に中国にも(これまでのアメリカにするように)同じように批判できるかというと……。

 カタールのドーハで活動するタリバンのある幹部は「われわれはイスラム教徒に対する迫害を懸念している。その場所がパレスチナでも、ミャンマーでも、中国でも同じだ。そして世界各地で起きている非イスラム教徒に対する迫害についても懸念している。だが、中国の内政には干渉しない」と語った。

中国国境に達したタリバン、内政干渉は回避か - WSJ

 タリバンが政権を奪還した場合、欧米諸国に加わって、国連で新疆での人権侵害を非難するかを尋ねたところ、シャヒーン氏は回答をためらった。同氏は、いかなる判断も、その時の現地の実情に基づいて下されるべきだと述べた。

中国国境に達したタリバン、内政干渉は回避か - WSJ

リベラルとまったく同じように、イスラムもつらいよ。
リベラルも、イスラムも、超大国となりつつある現代中国との距離感について、これまで掲げてきた大義とのジレンマに悩まされている現代世界。
やっぱり悪者のアメリカだけを批判しているだけでそれらしいポーズをできていた時代は楽だったよねえ。
しかし悲しいかなそんな単純な論理ではやっていけなくなってしまった。
多極化世界へようこそ!





タリバンと同じように、将来生まれるかもしれない日本のリベラル政権も――まさに現状の自公政権と同様に――このような「中国におけるジェノサイドや民族浄化というレベルの弾圧」について、そのポジションを問われることになるのは間違いない。
上記のタリバンのポジションは一つの指針になるかもしれないね。
ただやっぱりそれはこれまでドヤ顔で語っていたはずの、イスラム大義の自殺であるし、リベラルの普遍的価値観という大義の自殺だと思いますけど。


いやあ、もし村山総理が現代世界に異世界転生してしまったら、「リベラル政権」として一体どんな対中政策を進めていくことになるのでしょうねえ。
そして現実に自民党よりもリベラルな政権を目指している枝野さんは?
「カナダは中国の圧力に屈さぬ」トルドー首相、孟氏釈放を否定 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
まぁ自然に考えれば、本邦でもずっと『リベラルな国家』として評価の高かったカナダやオーストラリアみたいに、リベラル故に中国と激しく対立するというネトウヨ反中政権になるのかな???
もしくは、タリバンのようにリアリストとしてウイグルでの人権侵害には言葉を濁すのかもしれないね。



本物のリベラル政権が日本に誕生した場合の、日本の対中国のポジションについて。
(怖いモノ見たさ半分で)当日記は日本にリベラル政権ができることを応援してします。


みなさんはいかがお考えでしょうか?