私たちリベラルが避けては通れない難問

でもリベラルじゃない人たちは無視して突っぱねていればいいので簡単なお話。


鳩山元首相「香港人権法」を批判 習近平と会見も | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
うーん、まぁ、そうねえ。

記事は「中国香港の自由を求める学生たちの背後には明らかにアメリカの影がある」と銘打った上で、日本の鳩山元首相が「アメリカの中国に対する様々な不当な挑戦に対して直接厳しい批判をした」として、鳩山氏の発言を以下のように紹介している。

●経済面において快速な成長を続けている中国に対して、アメリカのやり方は、以前の日本に対するやり方と同じで、対中貿易戦争を発動している。

●そればかりでなく、米議会は最近、トランプの署名により「2019香港人権民主法案」を成立させているが、これは明らかに中国に対する内政干渉だ。

アメリカという一つの国家による覇権時代は必ず終わらせなければならない!

環球網は、さらに鳩山氏がこの国際フォーラム期間中に、何度も「中国が世界多国間主義を貫くことによって世界にいかに貢献しているか」と中国を高く評価したと報道している。

鳩山元首相「香港人権法」を批判 習近平と会見も | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

以前から個人的に鳩山さんが「似非」とまでは言いませんけど、所謂「欧米」的リベラルなそれとはかなり違う次元に居ることがよく解る発言かなあと。
やっぱりそうしたポジションをリベラルだと言うことは絶対にできませんけど。まぁ「友愛」と言うことはできるかもしれなくはなくもなくないかもしれなくないね。


別に鳩山さんの発言が「親中!反日!」な妄言であると言いたいわけではなくて、これ自体は、かなりポスト冷戦時代の主要テーマとなった、そしてそんなポスト冷戦が終わりつつある米中二強時代における今後の国際関係においても重要なテーマを含んでいるんですよね。
――他国の人権問題を批判し介入するような外交政策は、対外主権・内政不干渉という原則上、許されるのか?
一応はリベラルを称する私たちは、特に冷戦以後この難問を避けては通れなくなったわけでしょう。(もちろんそれ以前からあったものの)冷戦の軛から解き放たれ自由なった私たちは、BBCやCNNに代表されるような海外メディアによるテレビという『絵』で解りやすく人道危機の現場が放映されることで、その世論は簡単に燃え上がるようになった。
今の香港騒乱でも基本的な構図はそのままでしょう。
横暴な権力側に翻弄される自由を求める市民たち。デモ側もそれは解っていて、敢えてそうした絵を撮らせることを大きな目標にしている、というのはまぁ間違いない。


「私たちは同じ人間として、苦しんでいる人々を救わなければならない!」なんて。
口で言うのは簡単でもその為には越えなくてはいけないハードルが無数にあるわけで。その筆頭がまさに今回の鳩山さんが言うような「不当な内政干渉だ!」という批判でもある。
だからこそ、かつてガリ国連事務総長から始まった国連改革ってそういうハードルを下げることが目標の下にあった。
冷戦が終わることで、これからはいよいよ「絶対的かつ排他的な主権の時代は過ぎ去った」ことにしたかった人びと。
いざとなれば国連平和軍が主体となって該当地域の平和構築を予防し創造し維持していくべきだと。
まぁ失敗したんですけど。
ガリ、アナンと続いた国連改革が事実上失敗に終わった以上、最早その機運は完全に失われたと言ってもいい。


かくして現在に生きる私たちは今でもその「人道危機への介入」か、それとも「内政不干渉」か、という難問に答えを出せていない。
鳩山さんはそうしたリベラルな価値観の普及よりも、内政不干渉の方が重要である、という立場なのでしょう。別にそのポジション自体は本邦にもいっぱい賛同者がいるので別にいいとは思うんですよ。そのポジションは世界的に見ても少数派だとは絶対に言えないし。
「国連や、他国から、上から目線で賢しらに人権問題で説教されるのは内政干渉でありガマンできない!」なんて。
……あれ? もしかして鳩山さんはネトウヨなのでは????


ともあれ、しかしいくら人権侵害批判に反発する鳩山さんやネトウヨたちを批判してみても、曲がりなりにもリベラルと称する私たちにとってこの難題から逃げることはできない。
もし、国連や国際社会からその人権軽視の姿勢を批判されることがあれば粛々と受け止め是正しなければならない――のであれば他国にもそうするべきだと要求すべきなのか?
それともそんな事はとても言えないので、鳩山さんやネトウヨたちのようにそれを突っぱねるべきなのか?


もちろん原罪ある日本はそうすべきだけど、中国などの他国はセーフとか、時と場所と場合によるとか、ダブルスタンダードや日本特殊論みたいなことを言ってもいいですけど。
ついでに他国での人権状況なんて知ったことではないと、見て見ぬフリをしてもいいですけど。
でもそれってもう人類全体を含むべき射程を持つはずの、だからこそ「リベラル」であるはずの、普遍的価値観だとは口が裂けても言えなくなってしまうよね。


私たちは「他国のやることだから」とそこで起きている人権侵害や人道危機を無視するべきなのか?
それともどうにかしてその行為を辞めさせるべきなのか?

  • であればその為の行動の射程はどれくらい? 
  • 口先で批判するだけ?
  • 経済的に圧力を? ←アメリカは今ココ
  • 戦争してでも?


内政干渉と国家主権のバランスについて。
リベラルなみなさんはいかがお考えでしょうか?