『絶対的正義』の前で同じ顔をする私たち

人間っていつでもどこでもどんなときでもそんなものだ、と言ってしまっては身も蓋もありませんけど。


キリスト教少女の冒涜事件、証拠捏造などの容疑で地元の導師を逮捕 パキスタン 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
パキスタンで「ダウン症の少女が、燃やされたイスラム教の聖典コーランを『所持』していたことで逮捕された」という先々週のニュース*1が、こうしてオチがついたそうで。
まぁなんというか元々のニュースだけでもかなり救えないお話だったのに、そこに更に「その少女に罪を着せる為に証拠が捏造されていた」というオチがついて、更にどうしようもないお話になってしまった感がすごいですよね。マイナスにマイナスを掛けてもプラスにはならなかったというか、バッドエンドの後のエピローグで更に救えない結末を見せられてしまった感じです。
しかしまぁ原理的なイスラム勢力の勃興に苦しみ続けるパキスタンらしいといえばらしいお話ではあります。そこではある種の近代社会と同居しているからこそ、その問題はこうして大きな摩擦ともなってしまう。


さて置き、このお話を見ていてなんとなく思い出したのが『児童ポルノ単純所持』のお話であります。

 上司を失脚させ職を失わせる目的でPCに児童ポルノを仕込んだニール・ウェイナーという英国の男性が起訴された。ウェイナー被告は中学校を管理する仕事をしていたが、上司に不満を持ち、上司が解雇されるように仕向けようと考えた。そこで児童ポルノ入りCDを「上司のコンピュータに入っていた画像」と称して警察に送りつけ、また上司のノートPCに児童ポルノを仕込んで匿名で警察に通報した。上司は逮捕されたが、警察はウェイナー被告が匿名の通報をしたことを突き止めた。被告は以前に上司を失脚させる計画を漏らしており、犯行が発覚した。

せかにゅ:失脚させる目的で上司のPCに児童ポルノ 英で男性起訴 - ITmedia ニュース

一方は「コーランの紙片」を忍ばせ、そしてもう一方では「児童ポルノ」を忍ばせた。わーそっくりー。
そのそれぞれ二つの教義の絶対性は、そこではどちらも絶対的な価値観であるからこそ、その正義は強力な武器ともなってしまう。そしてその武器は(社会的に)人を殺す。いやぁ正義っておっそろしいですよね。絶対のものなど何もないと相対主義に走ってしまう人の気持ちもものすごくよく解ります。


ともあれ、まぁどんな法律・規則・教義であろうと悪用するバカはいるんだなぁと生暖かい気持ちになってしまいますよね。どちらもその根本には「より善き社会」を構築しようとしていたことは解りますけども、しかしだからといって必ずしも良い結果を生むとは限らないのだと。その正義の印籠の影でロクでもないことをする人たち。いつだって地獄への道は善意で舗装されているのだから。
いやぁ悲しいお話です。