amazon「ばーか 滅びろ個人書店!」

個人書店、チェーン店、そして最強最後の捕食者であるアマゾンへ。



オンライン書店の送料無料を禁止して街の本屋を守る通称「反Amazon法」ついに可決 - GIGAZINE
Amazonが送料無料を禁止した「反Amazon法」に対抗して「送料1円」に - GIGAZINE
そういえばアマゾンさんちinフランスで面白いことが起きてたそうで。これまでも何度か当日記でもネタにしてきた、半分くらい社会主義で規制国家なフランスさんちと、そんなものぶっ壊そうとするグローバルな資本主義の申し子であるアマゾンさんの戦い。

Amazonがフランスで設定した新たな送料は「1ユーロセント」で、記事執筆時点で換算すると約1.38円。つまり、送料無料禁止措置に対抗するため、1.38円だけ送料が取られるようになった、というわけです。

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0ユーロから1ユーロセントへ。明らかに売られたケンカを買ってやったった感がすごいですよねえ。


「あの素晴らしい商店街をもう一度」を社会は守るべきなのか? - maukitiの日記
まぁこのお話は、本邦でも昔からある議論の「古き良き商店街を守ろう!」運動のそれとほとんど同じ構図にありますよね。世界各国を見ても決して主流とは言えない「古き良き個人書店を守ろう!」というフランス的例外。
で、現実に行動に移すところはいかにも(規制による)文化保護大国であるフランスさんちらしいお話ではあります。市民社会の知識教養の源泉たる役割の一端を担ってきた『個人書店』を守ろうとする伝統的市民社会観を愛する人たち。


ただまぁフランスではこうしたグレーに近い手段を使ってどうにか保護してるとはいえ、ぶっちゃけアマゾンさんが多くの先進国で個人書店を絶滅させつつあるのって、ただ送料無料という点だからじゃないんですよね。それと同じくらい彼らの魅力は、探している本が見つけやすい、という利便性にこそあるわけで。ぶっちゃけ有名で人気な新刊をただ買うだけなら地元のチェーン書店で買えばいい。一方で、物書きなど知的労働を営む一部の人たちにとって旧来の『個人書店』の持つ尖った品揃えというのは、確かに魅力的ではあったのです。新刊と売れ筋ばかり並ぶチェーン店とはまったく違った、店主の個性がより表れる本棚たち。
でも、クリス・アンダーソンさんの『ロングテール』なんかで論じられているように、アマゾンの持つ無限に広がるサイバー倉庫というのはそんなニッチな需要にこそ強みを持ってもいるわけで。実際、amazonのサイトなんかは制限のない本のデータベースとしても機能している。
その意味でアマゾンさんが個人書店を殺すのは当然の帰結ではあるんですよ。そもそも「まず」大型本屋チェーン店という怪獣の台頭によって個人書店の多くが駆逐され――日本もそうであるように――個性的な本屋がニッチ市場という生存戦略の下に細々と生き残ってきた。そこへアマゾンというニッチ市場の更なる捕食者が登場した。サイバー書店というのは、チェーン店の襲来から導かれた個人書店の生存戦略を、根底から覆す天敵なのです。


現代において、そんなノスタルジー以外にそうした古き良き個人書店を守る意味があるのかというとやっぱり疑問だよなぁと。既に地元密着の知識教養の礎という役割はチェーン店に乗っ取られてしまっているわけだから。そこにさらに強力な外来生物がやってきただけ。
どちらにしても、もう本来あった原風景はなくなってしまっているのにね。まぁ手つかずの野生風景ではなく、ひたすら人工的な田園風景にこそノスタルジーを覚え「自然を守ろう!」とがんばる人たちも少なくないので、よくあるお話だと言ってしまっては身も蓋もありませんけど。
情報インフラと流通インフラの発達の果てに生まれたアマゾン。それらが揃ったからこそ彼らは登場し圧倒的勝者となったし、逆説的にそれらがある以上、何をやっても既存の本屋――特に個人書店には、フランスのようなやり方以外に、もう勝ち目はない。


amazon」対「フランス的例外」
まぁ端から見ている分にはやっぱり愉快な対決ですよね。