今更「最悪から三番目の選択肢」なんて選べない

世俗主義が元凶なら、シリアを放置するしかないじゃない
病メリカさんちの絶望。


シリア・アサド政権打倒で第3次世界大戦の危険性も 米下院議員が米政府の中東政策を痛烈に批判 | JBpress(日本ビジネスプレス)
うーん、まぁ、そうね。第三次があるかはともかくとして、しかし、現状でアサド後の解決策が見当たらない以上暗殺は正直無駄で「何もできない」という結論を持つのはまぁ別に不思議ではないですよね。そして。だからこそシリアが、悲しいことに、ああして放置され続けていることの証明でもありますよね。

 ガバード議員は、米政府がアサド政権を倒す行動をやめて、イスラム国やアルカイダ系過激派組織の殲滅に努めるべきと主張する。ただ、米国をはじめとするヨーロッパ諸国はいまだに統一された対シリア政策を打ち出せていない。

 ガバード議員のようなアサド政権打倒の動きを止めようとする議員は議会内では少数派だが、かつてイラクフセイン政権やリビアカダフィ政権を打ち倒した後に訪れた両国での政治的混乱を繰り返したくないとの思いが強い。

シリア・アサド政権打倒で第3次世界大戦の危険性も 米下院議員が米政府の中東政策を痛烈に批判 | JBpress(日本ビジネスプレス)

こういう結論になるのも仕方ないよねぇと。かといってもう今更積極的にアサド擁護もできるはずもなく。これならロシアさんちのように一貫してアサド政権擁護していれば話は簡単だったのにね。しかしヤクザ世界と相似な国際社会では吐いたツバはそう簡単に飲み込めないのでした。アサドを追い詰めることで彼による市民への無差別空爆祭りを招いた、という点でやっぱりひたすら自業自得なんですけど。




ともあれ、まぁこうした解決策が見当たらない、というのはほとんどそのままアメリカをはじめとする欧米社会の「世俗主義」への絶望でもあるんですよね。
フセインさんにしろ、アサドさんにしろ、ムバラクさんにしろ、カダフィさんにしろ、彼らは端的に言って「歪な」世俗主義――その批判自体は概ね正しい――で強引な手法で国家統治をしてきた。彼らはまさに現在のシリアやイラクリビアがそうであるように、宗派や民族や部族等バラバラだった人たちを国家の名の下に一つにまとめる為に世俗主義を標榜し、それに反対する輩は原理主義だろうが少数民族だろうが少数宗派だろうが、国民の敵として粛清した。
そこへ「もっと素晴らしい」やり方があるはずだ、と信じて欧米社会は『アラブの春』やらを通じて彼らを導こうとしたわけですよ。
――でも失敗した。失敗した失敗した失敗した失敗した。その努力はほぼ無意味だった、どころかマイナスかもしれない。
「別の」世俗主義なんて実現できなかった。より良い形の世俗主義なんて絵に描いた餅でしかなかった。このままだと『イスラム国』のような宗教原理主義者たちが、他宗教や多宗派を弾圧するようなヒドイ国家ができるかもしれない。でもそれって同じくイスラム原理主義者や少数派なんかを「世俗主義の敵」として弾圧してきた上記悪の独裁者たちと何も変わらないわけですよ。


どちらも政治的弾圧を以って秩序を維持しようとするならば、宗教国家よりは「まだ」世俗主義政権の方がマシかもしれない。
しかし彼らは既にそれを悪として切り捨ててしまった。失ったモノはもう戻ってこない。
一番と二番目に最悪の選択肢は――どちらが一番かは別としても――わかる、無政府状態か『イスラム国』支配か。
そして最悪から三番目の選択肢もわかる、悪の独裁者による弾圧体制。今の惨状を見れば上記二択よりは、おそらく、まだマシかもしれない。



こうなれば三番目を選ぶしかないのか? 一度は否定した選択肢なのにね。あるいはまだ何か別のアイディアが天から舞い降りてくるかもしれない。その別案として一番可能性が高そうなのが「ロシア主導の戦後統治」でもあるわけですけど。それなら全ての責任をロシアに押し付けて、自分たちが何もできなかったことの責任回避は出来るから。


かくして私たち国際社会はシリアの惨状を前に立ち竦む。だって中東における世俗主義について、新たな解決策は見当たらず、結局その中でも最もマシなのが旧来の悪の独裁者たちと同じやり方、という選択肢しか事実上存在しないから。
みなさんはいかがお考えでしょうか?