そして、やがてそれも終わるのだろうか?
伝統ある「ならず者国家を誅罰」の再生 - maukitiの日記
伝統あるユニテラリズムの再生 - maukitiの日記
前回前々回日記の続き。これまで長々と書いてきた、ならず者誅罰に再び邁進するユニテラリズムなアメリカの外交政策ではありますが、今回はその誕生について。
つまり、トランプさんが今見せているような、多国間条約や協定を嫌う『ユニテラリズム』ってアメリカという国家にとって最近生まれたのではなく、冷戦以後ずっと続いているトレンドでもあるんですよね。もっと言うとモンローな建国以来続く(こちらは冷戦期を例外とした)国是ですらあるかもしれない。
伝統あるユニテラリズムの再生 - maukitiの日記
じゃあ何で冷戦後に始まったの?
そもそも、こうした地点にアメリカが辿りついてしまったのは、もちろんそれが『伝統』という彼らのユニークな世界観もあるんですが、より重要なのはそれはもう身も蓋もなく「冷戦が終わったから」なんですよね。
――冷戦時代にはガマンし自制していたアメリカが、最早そうした精神を持たなくなってしまった。
実際、冷戦期のアメリカ外交政策には、今とは正反対な注意深さと自制こそがその中心にありました。であればこそ逆説的にレーガンさんのあまりにも勧善懲悪的な物言いは多くから批判されたわけで。それは一歩間違えば――というよりも時間の問題として、世界最終戦争としての全面核戦争は眼前にあった以上当然の帰結だった。
朝鮮戦争では戦線拡大をしようとしたマッカーサーを解任したし、ハンガリー動乱への介入も自制したし、ベトナムでも自分たちの敗北よりも重要なのは地域の限定戦争で終わらせることだったし、キューバでも無論そうした。
ソ連との戦いはあくまで封じ込め抑止するものであって、真正面から戦いを挑むようなモノではなかったのです。
しかし、もし、アメリカをそんな風に自制させていたソ連という重しが無くなってしまったら……。
封じ込めと勢力均衡時代のおわり。いまどきキッシンジャーとかおっくれってるぅー!
ここで面白いのは、ベルリンの壁崩壊から怒涛に展開していく冷戦終結はあまりにも劇的な変化であり、アメリカがその状況の変化を理解し対応するのに時間が掛かったという点でしょう。当事者であった父ブッシュ政権は、ソ連崩壊やドイツ再統一といった重要な事件に対応することで精一杯でアメリカが新たに持つだろう世界観についてきちんと取り組む時間もなかった。挙句には冷戦を終わらせ世界的混乱を概ね上手く乗り切ったはずの偉大な父ブッシュ政権は大統領選挙で負けてしまう。ザ・チャーチルパラレル。
かくしてクリントン政権がやってくるわけですが、ユーゴスラビアやソマリアなどで見せた彼らの外交政策の混乱ってそんな冷戦時代にあった明確な指針が消えてしまった故の混乱でもあったんですよね。そしてやがて彼らはアメリカというのは最早世界に遠慮する必要などないのだ、という境地に辿りついていく。オルブライトさんの態度とか象徴的だったよね。
クリントンさんはそれを発見し、子ブッシュさんはそれを加速させ、オバマさんは協力姿勢こそ見せたものの地域の勢力均衡にもそれほど興味もなく、そしてトランプさんはご覧の通り。
キッシンジャー流の勢力均衡な外交政策の後にやってきた、ユニテラリズムな一方的外交政策。
単純に当時の彼らが賢く、現代の彼らが愚かというよりは、ひたすら環境と状況による産物としてやってきたのだと個人的には思ってます。それがアメリカにとって、そして私たち同盟国にとって、幸福なことなのか不幸なことなのかは諸説あるでしょうけど。
ここで次に問題となるのは、アメリカの外交政策の「重し」となるようなライバルが再びやってくるかどうか、でしょう。もちろん相手は中国。何故なら既に世界第二位の特別な大国だからです。
中国は安定(平和とは言ってない)のための白馬の騎士となるだろうか?
勢力均衡の必要性が増すことで、アメリカが再び自制心を持たない狂犬でなくなる日が近いかもしれない。しかしそれはそのまま私たち日本が再び勢力圏争いの最前線に立つことになることでもある。いやぁますます軍備拡張が捗りそう。まぁ江戸時代にすらあこがれる人は一杯いるのだから、冷戦時代に憧れる人が居てもおかしくはないよね。更には日本にとってはある種の『黄金時代』でもあったわけだし。
みなさんはいかがお考えでしょうか?