トランプのいちばん長い日

運命の三月二十五日。


全文和訳 ムラー報告について米司法長官が議会に送った書簡 - BBCニュース
【解説】 トランプ米大統領政権にとって一番良い日 ムラー報告書 - BBCニュース
ということでトランプさん大勝利であります。なら散々やってきたこれまでのロシアゲートは一体なんだったんだ、と言われるとまぁなんとも言えない気持ちにはなるんですけど。政治の世界では推定有罪だからしかたないよね。

ムラー報告書と司法長官の手紙の内容は、これ以上はないというほど重要だ。

もしも米野党・民主党がこの大統領をホワイトハウスから追い出したいなら、それは2020年11月の選挙でやるしかない。それ以前はもうあり得ない。

大統領の上に1年10カ月にわたり影を落としていた暗雲は、消えてなくなった。両肩にのしかかっていた重みは、消えてなくなった。

【解説】 トランプ米大統領政権にとって一番良い日 ムラー報告書 - BBCニュース

先日も通常日記ネタで少し書いたように、お口せっせして偽証したクリントンさんですらそこまでいかなかったのだから、今回の件でも弾劾まで行くかというと元々怪しかったかなあと。それこそ元祖ゲートであるウォーターゲートの時のように、決定的な証拠があるならばともかくそれも無かったようだし。
ロシア側からすれば――報告書で言及されているように断られたとしても――トランプさんと「わざわざ」謀る必要性はなくて、自分たちが秘密裏に介入しておけば、あとはアメリカ国内の方で勝手に邪推し不信感から炎上するのは間違いなかったんだから。実際そうなっているように。



どちらにしても、トランプ大統領自身の資質の問題を差し引いたとしても、ここまで長引いてアメリカ政治に混沌をもたらした点でロシアの目論見は大成功と言っていいのではないでしょうか。
もちろん民主主義政治の根幹を担う『選挙』への介入は許されないモノであり、であればこそこうして綿密に検証を重ねることは大事ではある。しかしそれが必然的に生む政治的混乱こそが彼らの目的であることを考えると、介入を看過することもできないし、かといって相手にすれば文字通り相手の思うツボというのはほんと民主主義政治のつんでる感すごいよねえ。
であればこそ、政府には日頃からそれを絶対に『許さない態度』という暗黙のメッセージが求められるんですが、トランプ政権も当初は、そして端緒となったオバマさん時代の時の干渉にも弱腰だったことから、2016年の大統領選挙ではここまで大きな介入となったのだと言われていたり(いつもの責任転換とも言う)するのでした。


ロシアゲートは結局トランプの勝利であり、そしてロシアの勝利でもある、
これを成功事例としてしまうと、当然後に続く人たちは自信を深めることでしょうねえ。


扇動的言説に弱い民主主義。それってそのまま私たち有権者の弱さでもあるんですけど。
――そしてその外国からの介入は「あるかもしれない」と思わせるだけで十分効果がある。
いやあおっそろしい話だよね。今回の件はそれが現実に起こりうるのだとをまざまざと教えてくれた。


だから日本でも同様で、自民党が勝つにしても、あるいは旧民主党の時のような政権交代が起きたとしても、どちらでも起こる可能性のあるシナリオの一つでしょう。昔からアメリカの選挙介入は言われてきたし、おそらく今後は中国の名前が一番先に上がるようになるのは間違いない。




今回の騒動の教訓として、個人的にものすごくいいことを言っていると思うのはこの部分かなあ。さすが天下のBBCだぜ。

今の連邦議会でも民主党幹部の間には、弾劾を追及する路線への警戒心が常にあった。しかし今となっては、普通の人々の抱える諸問題、医療や仕事や大学の学費や教育や鎮痛剤中毒の広がりなどなど、そういう問題よりも、大統領を引きずり下ろすことに執着していると、そういう印象を民主党が与えていいのかどうか、考える必要がある。

【解説】 トランプ米大統領政権にとって一番良い日 ムラー報告書 - BBCニュース

いや、じゃあBBCのある現在のイギリスがそういう政治意識を持って運用できる要るのか言うとまったく――というかトランプ旋風と同次元で現在のイギリスは「民主主義政治のヤバさ」を実演中てもあるんですけど。
他人事だと冷静になって正論言えるのはあるあるではありますが。


ともあれ、少なくともこうした冷静さは明確に二大政党制のメリットではあるでしょう。あまりにも内輪の争いに堕していては、大多数の中間層からそっぽを向かれてしまう。いやあニホンとかいう辺境でもほんとそういう気持ちをもってほしいよね。


ひたすら内輪な権力闘争に明け暮れる政治家たちを見て、普通の人びとが思うことなんて古今東西どこでも一緒なんですよ。
推定有罪な醜い争い見ては民主主義政治への信頼度の低下し、そしてその低信頼度はより解りやすいポピュリズムな政治家たちを生む。
かくしてトランプは生まれた。
そして、そんなトランプが生まれたことでまた起きるこうした不毛な争いが、また次のトランプを生む基盤となっていく。
なんという負の連鎖。本邦も気を付けたいですよね。いや先を行っているのか。


がんばれアメリカ。