やさしくない民主主義の殺し方

制度こわれりゅ。


「ロシアが2016年の大統領選に干渉してトランプ陣営を助けた」とアメリカ上院委員会が結論を下す - GIGAZINE
ロシアがアメリカ大統領選で行なっていたこと......ネット世論操作の実態を解説する | 一田和樹 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
前回の通常日記でも少し書いたロシアによる世論操作について。

この調査結果を受けて、民主党陣営はトランプ大統領を盛大に非難しています。2020年のアメリカ大統領選における民主党側の候補者であるジョー・バイデン氏のスポークスマンは「ロシア政府は2016年にドナルド・トランプ氏の当選を助け、民主主義を弱体化するために介入し、ドナルド・トランプ氏も両手を挙げて歓迎しました。2020年においても彼らは同じことをしており、トランプ氏は彼らの援助を受け入れようとしています」とコメント。一方、トランプ大統領のスポークスマンは「この終わりのない、根拠のない陰謀論は急進的なリベラルとメディアのパートナーによって売り込まれており、彼らがいかにアメリカ国民の意思と2016年の選挙結果を受け入れることができないかを示しています」と述べ、トランプ大統領は「デマだ」と一蹴しました。

「ロシアが2016年の大統領選に干渉してトランプ陣営を助けた」とアメリカ上院委員会が結論を下す - GIGAZINE

あちらの思惑通りの展開になっていてロシア側は大成功だと思っているのでしょうねえ。
もともと問題も多かった大統領選挙に介入することで、アメリカの民主主義『制度』そのものへの不信感と分断を植え付けることに成功しているから。
レビツキーやジブラットらの『民主主義の死に方』によれば、ただ独裁者がそれを破壊するというだけでなく、それが登場してしまうような「民主主義制度への不信感」こそが、やがて民主主義を真に支えていた暗黙のルールや非公式の慣習を破壊する、と述べられているわけで。


本邦においても――一部のリベラルを標榜する人たちですら、自民党政権が続く不満からなのか、根本の民主主義制度=選挙への不信感を大きな声で叫んでしまう人たちは少なくないわけで。
「ムサシによって日本の投票結果は操られているのだ!」なんて。
もちろんそれを言っている本人たちは何も考えてないひたすら善意から聖なる民主主義を取り戻そうとしているんでしょうけど、そうした制度への不信感を植え付けているという意味では、一周回って民主主義を殺す方に熱心に見えてしまうのは皮肉なお話だよねえ。
実のところ、今回のニュースでも指摘されているような、ロシアが世論介入としてやっていることは同じであると。




ちなみにここでもう一つ面白いと思うのは、こうした民主主義制度そのものへの不信感というのは、ロシアそして中国となんかと政治的価値観として同じ次元に立ちつつあるという点だとも思うんですよね。
……かのようにやはり民主主義制度というのは欠陥だらけのカスなのである!
その一方でトランプやEU離脱から目を背けながら、精一杯虚勢を張りながらも民主主義制度を擁護し続けている私たち。
うーん、まさか冷戦時代のイデオロギー戦争のような構図が2020年になって復活している、ように見えてしまうなんて。
やっぱり歴史は終わっていなかったんだなあ。




おそらく、今後こうしたロシアや中国からの介入を避けるには、『自由』の制限などかなり自傷的な手法を採らざるを得なくなる。
外国からの介入と、そして自分たちの自由の制限と。
前門と後門の両方から迫られる私たち。
はたして我々の愛する民主主義は生き延びることができるだろうか?


みなさんはいかがお考えでしょうか?