誰かにとっての「悪夢の戦争」

ロシア史専門の大先生がアメリカにとっての「夢の戦争」と言ったということはつまり……。



ロシアによるウクライナ侵攻 どうやって終わらせるか? | NHK国際ニュースナビ
前回通常日記でも少し書いたお話。

実は、その直前の3月27日、ポーランドの首都ワルシャワで、アメリカのバイデン大統領が演説を行っています。プーチンと戦うことは、復活した専制国家に対する民主主義国家の戦いだという内容でした。

こうしてこの戦争は「アメリカの新しい戦争」になってしまったのです。

戦争の目的はロシアを弱めることですが、アメリカ兵は参戦せず、戦うのはウクライナ人だけです。アメリカは兵器を供与し、制裁や情報宣伝戦を進めています。

この戦争はアメリカの親を悲しませることがないので、いつまでも続けることができるいわば夢の戦争なのです。こうなると簡単には止まりません。

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いやまぁ『夢の戦争』というトンチキ具合もそうなんですけども、そもそも「こうしてこの戦争は「アメリカの新しい戦争」になってしまったのです」という因果関係もちょっとよく解らないよね。バイデンさんがそう言うだけで戦争になっちゃうんだ。
ウクライナの方を見ながら)最近は戦争のハードルすっかり低くなっちゃったよねえ。


更にはアメリカではなくロシア史が専門の人が「戦争の目的はロシアを弱めること」と言いながら「夢の戦争なのです」と言っている辺り、語るに落ちている感があって、文学というか思考の組み立てが透けて見える大変面白い文章だと思います。
――この構図についてもっと言うとアメリカにとっての『夢の戦争』というのは、つまり別の誰かにとっての『悪夢の戦争』ということであり、このロシア史を専門にしている人がどういう想定をしているのかと考えると……。
ここで「ウクライナにとっての悪夢の戦争」ではなく、「アメリカにとっての夢の戦争」と言ってしまうのはやっぱり面白いですよね。『和平』の話をしていながらも、しかしそこではアメリカとロシアの都合だけが語られウクライナの主体性について語られない。



ともあれ、でもまぁ前回の通常日記でも書きましたけど――ブチャなどでの虐殺について見ないフリをするという最大限の譲歩(?)をしたとしても――国際機関や条約そして国連を前提としたリベラルな国際主義を信奉する現代人の我々にとっては、受け入れがたいお話ではあるものの、しかし一面の真理が含まれているのも事実なんですよね。

国際法というものは、侵略の戦争を許しません。しかし、国際的な法律が常に守られていて、違反すれば罰が与えられるという枠組みができているかといえばそうではありません。あくまでも努力目標です。

国連の正義というものは非常に柔軟にできていて、意見が対立しても組織が壊れないよう、絶対的な正義がないような仕組みにしています。

法律的な解釈で今回の問題に対処しようとするのは幻想です。

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自国の世界平和を愛する本邦でそれを言うと漏れなくネトウヨ扱いされかねないので、あまり大きな声では言えませんけど。平和憲法の教えはどうなってんだ。




ここで面白いというかひたすら皮肉というかやっぱり語るに落ちているのは、そんな国連や国際法という、二度の大戦を経た人類たちが積み上げてきた『努力』を否定しつつも、

人々の間の意見の食い違いを調整して、最大限の正義や幸福を目指して努力していく。失敗したらやり直すということを積み重ねていかなければなりません。

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いやまさにそれこそが現代世界でなんとか生き残っているの国際法と国連の意義じゃないんかと。


しかし、和平派の彼にとってはそうではない。
国連と国際法は無力であり、各国が(別の形の)努力を積み重ねていかねばならないと述べている。それこそ最大限の正義や幸福を目指し努力していくなら、既存の国際法や国連を使えばいいのにね。
しかし、和平派の彼にとってはそうではない。
いやぁやっぱり語るに落ちている感があって面白いよね。


ロシア史専門の大先生が言い出した「アメリカにとっての夢の戦争」について。
――僕はアメリカ政治や軍事が専門な研究者たちが言うような「ウクライナ支援はアメリカの負担になっている」という方を信じるかなあ。それこそアメリカが対中国シフトをしていることが、今回の間接的な要因というだけでなく対米圧力を掛けられているのは間違いないだろうし。
まぁ日本でも「アメリカの代理戦争だ!」って言っている人たちいっぱいいるしね。ロシア史を専門にすればアメリカの真実が見えてくるのかもしれないね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?