ロウドウは人生。クラナドも人生。じゃあそれ以外に私たちが「人生そのもの」だと胸を張って言えるものってなぁに？
ハッスルする人は、出世できないのか（プレジデントオンライン） - livedoor HOMME - livedoor ニュース
ということで、労働を絶対善とし神そのものと崇める『労働教』におけるカリスマ大司教のひとりであるワタミ会長のありがたいお言葉であります。
神は労働に宿る - maukitiの日記
私たちの愛した『労働教』 - maukitiの日記
日本における「善き生き方」への宗教的解答を担っていた『労働教』についての適当なお話は、以前書いたのでそちらを参照。
「人間が働くのは、お金を儲けるためではなく人間性を高めるためである」
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上記以前の日記でも書きましたが、この単なる「拝金主義」ではないところにこの構造の希望と絶望が満ちているわけですよね。そして多くの人が指摘しているように、そうした価値観を拝金主義者たちが煽ってきた、という要素もやっぱり歴史としてあったりするのでしょう。歴史的な「資本家対労働者」の構図。
「働くことで人間性を高めることができる」
「善く働くことは善く生きることである」
「労働は人生を豊かにしてくれる」
それは現代日本において最早時代遅れとなりつつある価値観であります。グローバル化やロボット化の行き着く果てにある、避けようのない労働環境の激変。それらによって「人間の労働力」という価値は益々二極化を辿ることで――つまり、ピラミッドの上層ではそのサラリーが果てしなく高騰していく一方で、ピラミッドの下層ではサラリーは延々と底辺に張り付いたまま動かない――必然的に『労働教』のドグマは輝きを失いつつあるのです。神の陳腐化。
かくして「神を讃えよ」と訴える大司教に対して、無神論者となった若者達はこう問い返すのです。「それって『奴隷』と何が違うんだ？」なんて。
――そして、おそらくその指摘は多分に正しい。
しかしまぁそうした事実を分かっていても尚、彼のその言葉を全て100%完全に否定するのも難しい、という辺りに現代日本に生きる私たちのジレンマがあったりするんじゃないかと思うんですよね。だからといって完全にその（似非）カリスマ大司教の言葉を完全に無視することもできないから。
だって、その「生き方」に代わる対案を見出せない。
結局のところ、彼はつまり伝統的な日本人の「あるべき生き方」を提示しているのです。そして、伝統に従って生きよ、と。労働こそが人生の目的である。それは確かに「保守」派らしい振る舞いではあります。まぁもちろんそれに価値を見出せるのならば、そうして生きていけばいいし、逆に無意味だと思うのならば無視すればいいんですよ。しかし彼の言葉に反論し対抗しようとすると、そのハードルは思ったよりも難しいわけです。
だってそんな「労働＝人生」とは違う人生そのものへの目的を提示できないから。
このような「労働＝絶対善」と偶像視する価値観が現代の日本でも尚、それなりに影響力を持ち（衰退しつつあるとはいえ）なお支配的なのは、やはりここに理由があるからなのでしょう。故に私たちはニートをバカにすることをやめないし、世界でもユニークな存在である――ただの搾取による奴隷ではないある種自発的な――ブラック企業は生き続けている。
それは多くの一般の人びとにとって、やはり解りやすい明確な指針でもあるのです。「人間働いてナンボである」それはシンプルだからこそ、強力であるわけです。それこそ宗教に生きる人たちにとっての「神の為に生きよ」と同じくらいには。
彼は「労働は人間性を高められる」と言い、一部の人びとは「それは違う」と言う。そこまでは簡単なんですよ。そこから一歩先に進んで、逆に聞かれた時に私たちは困ってしまう。
そこで例えば、現在でも多くの国であるように宗教的な解答が用意されていれば話は簡単だったでしょう。（広義の）神のためだ、と答えれば良いだけだから。しかしそれさえも既に否定してきた私たちは、まるで中学生のようなモラトリアムに再び陥ることになるのです。
「じゃあ、それ以外に一体なにをやれば人間性を高められるというのだ？」
「お前は一体何の為に生きているのだ？」
多分に根本的で宗教的なお話ではありますが、しかし結局のところ、こうした点が日本の労働環境をめぐる問題の根幹にあるんじゃないかと思ったりします。逆説的にここが突破＝対案を出せないからこそ、その伝統的な滅私奉公な日本的労働風景は結果として温存され続けてしまう。
もし、それをどうにかしたいと願う社会的良心に満ち溢れた人は、是非そこを解決してくれればなぁと。僕にはまったく思いつきませんのでいつもの如く誰かばんばってください。
みなさんはいかがお考えでしょうか？
