選挙をエンターテインメントとして消費することの末路

「投票にいかない有権者」についての適当なお話。



都議選投票率43・50%…過去2番目の低さ : 地方選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
結局今回の投票率もそれはまぁ低空飛行だったそうで。
たぶん有権者は寝てるんじゃないかな - maukitiの日記
前回衆院選前に書いた日記でも言及しましたけど、こちらも予想できた結果ではありますよね。有権者たちはものすごく後ろ向きで気の重くなる――まさに民主的選挙選挙の本質でもある――「どれが一番マシなクソか」という不美人投票をするくらいならば、ごく当たり前に、投票することそのものを放棄するだろう、と。
それは前回衆議院選挙がそうだったし、今回の都議戦もそうだったし、おそらく何か大きなイベントでも起きない限り次の参議院選挙でも似たような構図となるでしょう。
海の向こうの『革命』は持ち上げても、足元では過半数が選挙に行かない私たち。
選挙啓発活動:「若者も政治に関心を」 投票率向上へ、武蔵大生ら /東京− 毎日jp(毎日新聞)
そんな「選挙への無関心」について。マスコミの皆さんをはじめ低い投票率が嘆かれていますけども、個人的には、それって現状認識として微妙にズレていると思うんですよね。
というか、この過半数を切るような投票率が常態であって、むしろ前回政権交代時にあったような「熱狂」こそが異常事態であるんじゃないかと。
そもそも、かつての小泉旋風や2009年の政権交代の頃にあったように、選挙をある種のエンターテインメントとして演出してしまったら、そのブームが過ぎ去ったとき、現在のような「政治離れ」な状況になってしまうのは当然なんですよ。政治への関心を一時のドーピングで、一時の熱情でその場だけを盛り上げても、結局その後にやってくるのは反動としてのより大きな落差しかない。


それでも、確かに選挙をエンターテインメントとして盛り上げることで人びとの関心を集めることができたと擁護することもできなくはないかもしれません。
――しかし、結局のところ、現状のマスコミの皆さんのやっていることって、政治や選挙を使って、視聴者に一つのストレス解消を提供している過ぎないんですよね。週刊誌やテレビのワイドショーでやるように、スポーツのイベントや、芸能、事件や事故を面白おかしく報道しているのとまったく変わらない。
どこまでいってもそれはただその場で消費されていく刹那的なイベントとしてしか扱われないために、結果として長期的問題として『政治』が真剣に議論されることもない。かくしてエンターテインメントとしての政治は賞味期限が切れた時、熱狂前よりも更に冷えきってしまうのです。そのブームが過ぎ去ったあと、まるで未だに古い流行にしがみついているような印象さえ与えてしまう。


それってまぁ、私たちの生活と絶対に切っても切り離せないはずの『政治』に対する付き合い方として、適切な距離感だとはとても言えませんよね。
偶に自分が気が向いたときだけちょっと触って、やっぱり何も変わらないじゃないかと簡単に背を向ける。そんなんじゃ子供も、ペットも、観葉植物でさえも育てられませんよ。いわんや政治家をや。自分が気が向いたときだけ関心を持ち、なのに結果を期待する。そんな都合のいい話があるわけないのに。
もちろん政治家たちだってバカじゃないから、有権者のそうした態度に対して、それに見合う態度で接するようになっていく。


こうした「政治の無関心化」について、もちろん単純にマスコミの皆さんだけが悪いわけでは決してないでしょう。我慢強くに政治に関心持ち続けることができない有権者も、そして絶望されるような政治しか見せない政治家にも等しく責任はあります。
しかし、やっぱりその二つと同じか、あるいはそれ以上に現状の政治報道や選挙報道に対するスタンスは、正直ロクでもない結果しか生みだしていないよなぁと思います。バカみたいに盛り上げて、そしてブームが過ぎ去ったらそれまでで、何年かしてからまた人びとが忘れた頃に再びエンタメとして盛り上げる。


前回の民主党政権のように、結果として、選挙で失敗してしまうこと自体は別にいいんですよ。小選挙区制度というのは良くも悪くもそういう選挙制度であるわけだから*1。どちらにしても選挙結果がはっきりと出る。そして選択の結果が解りやすいからこそ、その制度は有権者の政治意識が高まるインセンティブを持っているのです。なんてバカな選択をしてしまったんだ、よし次はもっと上手くやろう、と。
ところが、少なくない有権者にとって選挙というのは一過性のエンタメでしかないからどこまでいっても一定以上の重要性を持たずに、失敗した経験も過去の教訓も簡単に忘れてしまう。
なんて不毛な繰り返し。




いやぁ、一体誰が悪いんでしょうね?

*1:日本のは比例代表制が並立して色々あるんですが、それはここではまぁさて置くとして。