振り返れば(左右に)ヤツらがいる

中道化の行き着く果て。


独連立合意でともに強まる党内不満 メルケル首相の指導力低下も | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
英国がドイツに輸出した政治的混乱 大連立の行方を左右するSPD党員投票、3月4日に要注目 | JBpress(日本ビジネスプレス)
そういえばドイツで、ヨーロッパでは特に珍しくもなくなった長期の連立難航がようやく終わりが見えてきたそうで。

 先週、CDUとバイエルン州の姉妹政党であるキリスト教社会同盟CSU)、それにSPDの3党は、現在の大連立を継続することに同意した。

 しかし、SPDの戦略家とベルリンの政治評論家は、ずっと続く大連立にうんざりしているSPDの草の根党員の間で進行している反乱をあまりに過小評価していた。

 こうした党員は筆者と同じように、半永久的な大連立は長期的に中道を弱体化させ、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のような急進的な小政党を強めることになると主張してきた。

英国がドイツに輸出した政治的混乱 大連立の行方を左右するSPD党員投票、3月4日に要注目 | JBpress(日本ビジネスプレス)

これって現在進行形で、民主主義国家たちが抱える宿痾の一つ、その典型例ですよね。


冷戦後、決定的な左右のイデオロギー対立が消え去ったことで、大政党の中道化が進んだことの帰結。左右を問わない垣根を越えた素晴らしい政策群の実行であり、そしてもう一つ選挙で勝つ為の賢い選択・最適解として進んだそれは、いつしか有権者たちに「誰に入れても一緒」という失望意識を生んでいく。仮に政権交代があっても、良くも悪くも同じ政治が続き何も変わらないじゃないか、という有権者たちの諦観。
ここで話が終わるならそれはそれでまぁ「若者の政治離れ」な事象として一つの結末として受け入れることはできたかもしれない。
――でもそうはならなかった。ならなかったんだよ。メルケル
本来のポジションを忘れるほどに穏健化し違いが見えなくなっていく「中道右派」「中道左派」。そうした中道的政策に絶望した人たちは、自身の投票行動を満足させる為には必然的により端の方の政党・政治家を求めるしかなくなっていく。
まぁ後は現代先進国にあるすばらしき民主主義政治を見てご覧の通りでしょう。


左右の更に端、これまで異端とされ埋もれていたはずの政治家がポピュリズムと共にやってくる。皮肉にも彼らはどちらも同じ真実を叫ぶんですよね。
「既存の主流政治家たちは自己利益のみを追求し、中央政治は腐っている!」
――まぁまさに選挙で勝つ為により中道化していった大政党たちという意味では、そこまで間違っていないよね。


彼らを生んだのは、単純にバカな有権者たちの営為というだけではなくて、中道化した政治エスタブリッシュメントたちの失政、その不満の帰結でもある。そりゃ中央が全滅してしまったら端からやってくる以外にないのだから。
かくしてイギリスは離脱し、アメリカはトランプを生んだ。
基本的には歓迎すべき変化でもあった政治の中道化・穏健化。しかし多様性を失った集団は、まさに自然界が教えてくれるように、一度の失敗で壊滅的被害を受けかねない危うい性質を持ってしまうことになる。



さぁて、ドイツはその『中道化の罠』を抜け出すことができるのか。それとも、イギリスやアメリカのように「投票の結果によって」異形の何かを生むことになるんでしょうかね? といってもそれは100年前にドイツが通った道ではありますけども。


がんばれ民主主義。