(民主主義政治の)死に至る病

既存政党への絶望。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39590
ということでヨーロッパの少なくない国で、いわゆる『極右』な政党が(局地的とはいえ)勝利を重ねていることへのFTさんちの解説であります。まぁ概ね同意するところではあるかなぁと。

反体制派政党が勢力を伸ばしている理由の1つは、主流政党が政策を大きく誤ったからだ。各国政府は消費者に借金を奨励し、銀行にしたい放題させ、欧州プロジェクトの頂点としてユーロを設計した。過去5年の間、一般国民が、増税、失業、社会給付削減、給与凍結などの形で、これらの愚行の対価を支払ってきた。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39590

個人的にもやっぱりこの「既存政党への失望」というのは最も大きな要因の一つであるのだろうと思います。
それこそ代表例の一つとしてあげられるフランスの親ルペンさんの経緯なんてまさにその通りだったわけですよね。保守党も社会党も失望された結果、それ以外の第三の道として彼らが登場し、批判票がそこに流れ込んだ結果があの有様であります。比較的マシな展開をたどったのがイギリスで、あちらは保守党と労働党の二大政党という中から、第三の選択肢として自民党が登場したりした。
既存政党が完全に1から10まで無能で不誠実であったとは言えませんけども、しかし、有権者たちはそんな彼らの対応の限界を見てしまった故に、新しく登場する「私は魔法の杖を持っている!」という扇動的な言葉に転んでしまう。
民主主義の限界、と言ってしまってはやっぱり身も蓋もありませんけど。


ともあれ、こうした民主主義政治の先輩である欧米政治の現状を嗤うのは簡単ではありますが、それでも、彼らのそんな行動はそれなりに民主主義が根付いた社会として洗練されていることの証明でもあるんですよね。
――だって極右だろうがなんだろうが、少なくともそれは「政党」の体をとっているんだから。
もしこれが、未成熟な民主主義社会であれば、既存政党の絶望の後にやってくるのはそれこそ政党以外の何か――大抵「軍隊」であるわけで。ザ・クーデター。あるいは政治手続きを無視した革命待望論。しばしば、それこそ最近のエジプトのように生まれたての民主主義国家で起きること。政権運営に失敗した後に、一気にそんな展開を辿ってしまう理由。既存の政党政治への絶望が、そういう場所に着地する。それこそ1930年代後半の私たち戦前日本だって、経済危機と社会不安からの既存の政党政治及び代議制への失望が、ああした場所へとたどり着いてしまったのだから。


その点では、確かに極右政党の伸長を許しているとは言え、それでも最後の守るべき一線は越えていないヨーロッパの政治状況は、それはそれでやっぱり見るべきものがあるよなぁと思います。
故にただ極右政党を支持する人よりも、無邪気に政治的手続きそのものを軽視して「革命だ!」なんて叫ぶ人の方がよっぽどタチが悪いんですよね。まぁ現代日本にも一杯いそうなのが頭が痛いんですが。
――でもまぁこの辺は今回の話とはあまり関係ないので割愛。



ちなみにこうしたヨーロッパの現状から我らが本邦の現状を振り返って見てみれば、日本のあの2009年のセイケンコウタイって二大政党制定着の萌芽ではなく、むしろこうした「既存政党への失望」という構図そのものだったという方が近いのでしょう。日本の失望された『既存政党たち』そのものだった自民党とその派閥たちに失望した結果、有権者たちはとにかく学校や家には帰りたくないとばかりに、それ以外の何かに投票した。
その意味では、日本は現在の欧州政治の一歩先を行っているとも言えるんですよね。だってもうその海のモノとも山のモノともつかない政党を現実に政権につけてしまったんだから。
――第三の選択肢どころか、第二の選択肢すらなかった日本の政党政治の悲劇。
皮肉な話ではありますが、こうして一度痛い目にあったせいで、今後の日本が欧州政治の後を追うという可能性はあまり高くないんじゃないかと思います。良くも悪くも自民党以外に選択肢がない。おそらく、今後しばらくの間は(まず間違いなく再び自民党に絶望するだろう)日本の有権者は馬鹿げた政党――たとえば極右政党なんかに投票するくらいなら、投票そのものを放棄するでしょう。
できればその間に、怪しい第三の道ではなくて、なんかこうもうちょっとマトモな政党が出てくれることを祈るばかりであります。でも個人的にはやっぱり「調整と妥協」こそを愛する日本人には二大政党制ってどうもあんまり合ってない=二大政党のもう一翼を望むのは期待薄な気がしますけどもやっぱりここでは以下略。

 しかし、最終的な選択を行うのは有権者自身だ。ティーパーティーが米国で勢力を拡大した理由の1つは、ごく少数の有権者が、特に特定の主張に有利に改変された選挙区で予備選を支配することにある。欧州議会選挙では、多くの有権者が単純に選挙に足を運ぼうとしない。それが反体制派政党にとってありがたい条件となっている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39590

かくして、日本でも今後しばらくの間予想される低投票率こそが、こちらでは逆説的にイロモノ政党の登場を抑制する。まぁこうした日本の状況とヨーロッパのそれを比較すると、一体どちらがマシなのか、何だか生暖かい気持ちになってしまいますよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?