中国はブラックボックスである

故に楽観主義者も悲観主義者もそこで自身が見たいものを見つけることができる。


「うそには3種類。うそ、大うそ、そして統計」 中国の信頼性に疑問 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
まさかディズレーリ先生のお言葉がここで復活するなんて。

【8月22日 AFP】経済規模で世界一に上り詰める勢いの中国。だが、同国の経済関連統計の信頼性には相変わらず疑問が付きまとう。

 事前予想と大きくかけ離れた中国の月次貿易統計に今年、エコノミストらが異議を唱えた。3週間ほど前には、景気の先行きを示す指標のひとつ、製造業購買担当者景気指数(PMI)で、中国国家統計局と金融機関の数字が正反対の内容を示した。さらに、インフレ率の計算方法についても疑問が投げ掛けられている。

 中国の統計の信頼性については、ほかならぬ李克強(Li Keqiang)首相がかつて疑問を呈したことがある。内部告発サイト「ウィキリークスWikiLeaks)」が10年に公開した米外交公電によると、今年3月に首相に就任した李氏は、遼寧(Liaoning)省で党委書記を務めていた07年、当時の駐中米国大使に、中国の一部の統計は「人為的なもの」で信頼できないと話した。

 米外交公電によれば、李氏は遼寧省の経済動向を判断する際に注目するのは電力消費、鉄道貨物取扱量、銀行融資の3つだけで、「他の統計、特に国内総生産GDP)は参考にする程度だ」と笑いながら話したという。

「うそには3種類。うそ、大うそ、そして統計」 中国の信頼性に疑問 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

まぁ昔から指摘され続けてきたお話ではありますよね。中国の半ば「想像された」各種統計について。それこそアマルティア・セン先生が指摘する大躍進政策の惨状の本質――つまり当時の地方政府がおもねって党中央に過剰に成果報告をした為にその数字に基づいて(明らかに実現不可能な)徴発及び生産目標が設定されることになった、というお話を思い出さずにはいられません。
まるで成長していない人びと。


ともあれ、しかしそんな中国の地方政府の独断専行っぷりが政策的に全て不味かったのかというと、やっぱりそういうわけでもないんですよね。最近話題になった中国における地方債務の増大、あるいは『影の銀行』問題など、別の見方をすれば地方政府が中央発の非効率的な規制や制度から逃れて自由に動いたことこそが、そもそもの中国経済飛躍の要因の一つでもあったわけです。
1978年の改革開放後、それでも動きの遅い中央政府による権利や契約の保護を期待するのではなく、地方政府は独自の権限で(民営でも国営でもない)公営企業を生み出し保護推進するようになっていくのです。その上で、稼いだ金は中央に取り決めた上納分さえ納めれば、後は自分たちの好きにできる。地方政府によって守られた企業が稼げば稼ぐほど地方政府は豊かになる、なんて自由経済というのは素晴らしいのだ。中国における最も熱心な利益第一主義者たち。
かくして彼らはプラスはより大きく、そしてマイナスはより小さく報告してしまえ、というインセンティブが生まれるのです。


ただ、じゃあそうした構造を無くしてしまえばいいのか、というとやっぱり簡単ではありませんよね。上述したようにまさに地方政府の経済的自由こそが中国経済成長のエンジンであったわけだし、ついでにそうした自己利益というインセンティブを無くしてしまうと、ただでさえ中国における大問題である腐敗や汚職一直線であります。
この辺りは単純に中国の文化的問題としての粉飾された数字というよりは、中国の地方自治の問題と絡んで、解っていても尚やめられないというデリケートな問題であるのでしょう。そこに手を入れると国家そのものへの大激震となりかねない。
CNN.co.jp : 薄元書記、初公判で一部否認 中国 - (1/2)
まぁ最近の薄熙来さんなんかの経過を見ると、中国さんとしてはやっぱり少しずつそうした方面へ手を入れ始めているのかなぁと思うところはありますけど。