彼らの資本主義的美徳の先にあるもの

その隙間を埋められなくなった時、


グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国? | ふるまい よしこ | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
競争と効率化と合理化といつだって紙一重にある工夫である、グレーゾーンの扱いについて。

 中国はもともとグレーゾーンの多い国だ。そこでグレーゾーンを利用して次々とユーザーを喜ばせてきたアリババやテンセント。中国のグレーゾーンはちょっとやそっとでは埋まらない。だが、そのグレーゾーンの不安を煽られても、彼らのイノベーションを支えるのは絶大な信頼なのだ。今のところ、余額宝やアリペイ、「微信支付」に対する失望の声は伝わってこない。人々はアリババやテンセントがどんなふうに権威の壁に立ち向かっていくのかをじっと見守っているかのようだ。

グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国? | ふるまい よしこ | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

まぁ元々中国さんの経済的成功というのは、『競争』というこのグレーゾーンの踏み込み具合のチキンレースこそが、相乗効果をもたらしてきたわけですよね。相手のいいところは真似をする、という漸進的な改革の波こそが中国に――ロシアが半ば失敗した――上手い市場経済への段階的に移行することを成功させた。まぁその成功後の顛末については、身も蓋もなく『党』への影響力こそがモノを言うんですけど。
中国はブラックボックスである - maukitiの日記
以前の日記でも書いたお話ではありますが、動きの遅く成りがちな巨大な中央政府の間隙を突くことこそ、中国に生きる彼らの成功戦略であったわけです。ただやっぱりそれは、影の銀行やらの現在の負債となっているものの要因でも一つでもあったりするんですけど。
ともあれ、上記引用先にある彼らのその「絶大な信頼」というのは、そうした資本主義的美徳への称賛の一形態ではあるのだろうなぁと。



 今、インターネットと切っても切れない生活をする人々は、長蛇の列に並ばずに簡便なサービスを提供し続けるアリババ、そしてネットを使って現実には楽しめないゲームや語らいの場を提供してきたテンセントに、絶大な信頼を置いているのである。その信頼はある種、彼らとともに成長してきた「仲間」としてのそれであり、権力を背景にした強制力や管理を使ってライバルを叩きつぶし、弱者を蹴飛ばして大きくなった上に権威を笠に着る国有銀行や管理当局を大きく上回っている。

グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国? | ふるまい よしこ | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

さて置き、現在における中国政府への不満や反対勢力というのは、こうした緩やかな形で吸収緩和されてきたわけであります。もちろん中国共産党による身も蓋もない圧倒的に強権的なな弾圧によってその政治への不満の声は常に抑圧されてきたものの、それでも彼らのその「豊かになる」という希望は大きな役割を果たしてきた。
故に――まぁ多分にベタな話ではありますが――中国の経済成長こそが彼らの政治的安定のキモであるわけですよね。
中国主席が一党支配の正統性主張、「多党制は機能せず」| Reuters
そして今後も中国共産党はそれを捨てるつもりはない。まぁ実際これまでそれは上手くいってきた以上、その選択は解らないものではありませんよね。


その上で、このグレーゾーンの扱いというのは、そうした資本主義的美徳を今後も継続できるか否か、という結構重要な所に掛かっているのだろうなぁと。もしこれが根本的な形でその「工夫の余地」を潰されてしまえば、その不満は必ず別の所へ向かうことになる。