またもや引き裂かれつつある欧州連合

南北に続いて東西=新旧に。


バルト諸国が抱く「ロシア系住民保護」への懸念:国末憲人 | ヨーロッパの部屋 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
この辺のお話についてはとてもよく解るよなぁと。○○系住民保護という懐かしの名目。少し前までには所謂『二重国籍』なんかが忌避され禁止されてもいた理由の一つ。

 今回ロシアが一連の行動の名目として挙げているのは、クリミア半島で6割に達すると言われる「ロシア系住民の保護」だ。これが波紋を投げかけている。旧ソ連や旧東欧諸国の多くは、ソ連時代に移り住んできたロシア系住民を抱えている。彼らを突然、ロシアが保護すると言い出したら? そのような不安を、ロシアの今回の行動は裏付けることになった。

 特に、ロシア系が多いバルト3国で動揺が広がっているという。欧州軍事専門サイト「B2」によると、米軍は6日、バルト3国側からの要請で戦闘機6機を英国からリトアニアに移動させるなど、支援強化に乗り出した。バルト3国は防空体制が極めて弱く、リトアニア国防省は「ウクライナ情勢に対応した動き」と説明しているという。

バルト諸国が抱く「ロシア系住民保護」への懸念:国末憲人 | ヨーロッパの部屋 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト

ともあれ、アメリカさんちのやる気の無さっぷりは理解できるとして、もう一つのプレイヤーでもある欧州連合のぐだぐだっぷりはやっぱり「対ロシア意識」というモノで分裂しかねないことが背景にあるわけで。
ウクライナはどちらの陣営を夢見るか? - maukitiの日記
ウクライナ騒動の初期の頃に書いた日記でも少し言及しましたけども、

一方でヨーロッパの側は、ならばそんなロシアを刺激するようなことをしなければいいではないか、というのは確かにその通りなんです。実際ヨーロッパの内部でもそうした声は少なくない。

しかし、ここで既に旧ソ連の影響下にあった東欧諸国の一部が既にヨーロッパの側に付いている。というそれはもう重要な事実があるわけで。つまり、ここでウクライナの国民がもし仮にヨーロッパ側に付くことを民主的手続きに則って正式に意思表明した場合、それを見捨てることは、そうした東欧諸国の手前絶対にできない、というジレンマがあるんですよね。そこでウクライナを見捨ててしまったら、必ず次は自分の番かもしれない、と考えるのは必然であります。

こうした構図はNATOや私たち日本の日米同盟でも言われている構図であります。もし肝心な時にそれが機能しないのであれば、そもそも存在意義自体に疑問符が付いてしまうものの、しかしだからといってそれで自国にはあまり関係のない危機に巻き込まれるのも勘弁して欲しい。同盟関係や集団安全保障における、典型的なジレンマ。

ウクライナはどちらの陣営を夢見るか? - maukitiの日記

あれから半年経って、デモは炎上しまくった挙句結局ロシアの介入を招いてしまってご覧の有様であるわけですけども、そんな欧州連合内部にあるジレンマはまぁ見事に表面化してしまいつつある。
ただでさえ経済金融問題で(南北に)亀裂が入っているというのに、これまでどうにかこうにか維持できたいた欧州連合内における外交政策の一致という所にまで(東西に)亀裂入りかねない。このウクライナの問題が『欧州連合』の根幹に関わるのは、そういう理由なんですよね。今後は対露『経済制裁』をめぐってますます欧州連合内で議論が割れていくことでしょう。
ロシアをより恐れる国々と、そこまでは恐れていない国々とで。おそらく、プーチンさんも欧州連合全体と交渉するのではなくて、メルケルさんなどを中心に二か国協議を多用することでその間隙を突いているのは既にニュースで流れている。ここにNATOが絡むと更にまためんどくさいお話になるんですけども、それはまた別のお話ということで。


新しいヨーロッパと古いヨーロッパにある隙間風。
がんばれ欧州連合