国家主権という儚い幻想

だからこそ人が夢を見てしまうもの。


ウクライナ:領土喪失、市民ら涙…首都キエフ - 毎日新聞
ウクライナ、CIS脱退の方針 クリミア駐屯兵撤退へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
クリミアの軍基地襲撃で2人死亡、ウクライナ危機は「軍事段階に」 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
そういえば今回の愉快なウクライナ危機でウクライナさん側からのお話を書いてなかったので適当に。

ウクライナの首都キエフの市民は、クリミアの領土を失う事態が進行することへの危機感を強めていた。

 旧反政府デモ隊の拠点となったキエフ中心部の「独立広場」では16日、設置されたスクリーンに映るクリミア関連ニュースを市民が険しい表情で見つめ、中には涙を流す人の姿もあった。

ウクライナ:領土喪失、市民ら涙…首都キエフ - 毎日新聞

ということでもちろんウクライナ自身には不満がないはずなく、納得できるわけもないけれど、しかしそれでもクリミアの現状を追認するしかない。というのは21世紀の現在も変わらず『国家主権』なんてものが一皮剥けばまったく幻想にすぎないということを、観客たる私たちにとって、これ以上ないほどに解りやすくまざまざと見せつけてくれるお話ではありましたよね。
一方からはセルビアグルジアや前回ウクライナのように「民主化要求」を行うことで国家の主権はないがしろにされ、もう一方からはこうして身も蓋もなく軍事力を背景にした介入によって同じく国家の主権などまるでないように振る舞われる。
旧ソ連の中心で「リメンバーコソボ!」とさけぶ - maukitiの日記
今回のロシアさんによる大暴れというのはまぁ確かに見た目「劇的な」侵害ではあるわけですけども、昨日の日記でも書いたようにそれは決してロシアさんだけの得意技というわけでも決してない。それこそ欧米諸国は『アラブの春』でも散々やらかしたように民主化要求の名を借りた相手国家の主権の軽視をずっと続けてきたし、また欧州連合ギリシャなどへの経済支援の際にはそれはもう相手国家の主権などまるで気にしない改革要求を上から目線で押し付けていたし、そうしたやり方はIMF世界銀行だって多かれ少なかれやっている。更には、安全保障上の問題や経済利益の為には「進んで」国家主権を手放す政府さえあったりする。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40200
ついでに、しばしば中国さんちの伝統的な外交政策であり今回も口にする『内政不干渉』の原則だって、最近の事例なんかを見れば結局のところあれも「自らの国家主権を守る為であれば、他国のそれは概ねどうでもいい」というやり方でもあるわけで。


あのウェストファリアからの教訓である「国家の主権に基づく世界秩序」を目指した時代から、実の所まるで成長していない私たち。


『領土喪失』というまぁ結構大きなイベントにも関わらず、今回のウクライナは、欧州連合どころか国連さえも誰も助けてくれなかった。もっと言えば、アメリカにしろ私たち日本もできれば関わりたくないというのが絶対の大多数意見ですらあるのは、やっぱり救えないお話ではあります。別に同じ道を辿ると言いたいわけではまったくありませんけども、しかし、いつかきた時代もこういう空気感だったのだろうなぁ。自分たちだけはウクライナのようには決してならないようにしなければならない、なんて決意する人びと。
やっぱりその決意もまた、あのドイツとソ連とでものの見事に分割されたポーランドの時代からあんまり進歩していませんよね。