アンバランスなDroneAttackをして

無人機攻撃の可能性、シギントの限界。


アメリカはドローンで、ターゲットではない人を殺していた(最新報告) | ハフポスト
「米の無人機攻撃で殺害 約9割が別人の時期も」報道 NHKニュース
ということで大騒動になりつつあるインターセプトさんの暴露ネタであります。まぁ前日のMSF誤爆でも少し書きましたけど、まぁやっぱり陰謀というよりはひたすら標的の適正な設定について無能であっただけだよねぇと。それでもただ全方位に無能なだけであったならまだマシではあったんですよ。しかし彼らには正しかろうが間違っていようが、強引にやるだけの実行力と熱意が備わっていたという点で、こうして地獄が生まれることになった。


この辺は、単純にアメリカの個別性質が云々というよりは、まさに先駆者として人類社会が到達し普及過程にある「無人機攻撃」の予期せぬ欠陥なのだろうなぁと思います。兵器の長射程化と精密化はどんどん進歩しつつあり、ついには無人機攻撃によって低コストという次元まで踏み入れつつある。
――ところがそんな新機軸な攻撃手法は、その自軍兵士生命の危険がほぼ無い=容易すぎる攻撃という点で、その容易さと攻撃対象への設定難度とに致命的な不均衡を生んでいる。今回の暴露報道で明らかにされているように少なくともシギント=通信傍受だけでは誰が狙うべき敵な調査し設定する事にほとんど進歩ないくせに(それこそ未だに現地ヒューミント=人材派遣こそが最も効果的であると言われているわけで)その攻撃能力だけが歪に進化したら、こうなるのはほとんど必然の結果ですよね。
可能性は怪しいけれども、攻撃は出来るからとりあえず爆破しよう。大抵の場合、そうした攻撃目標についての所在地情報の鮮度は限りなく短いものであり、時間との勝負なわけですよ。ここで今すぐ攻撃指令を出さなければ次いつ補足できるかわからない。その悪魔の誘惑――確実な情報は得られないが確実に攻撃は出来る――はかなり強力なんですよね。
攻撃するだけなら地球の裏側でジョイスティックを動かしボタンを押すだけでいいものの、しかし「誰が敵か」という点についてはそんな簡単にいかない。ゲームだったらシステム側がそれを教えてくれるのにね。


だから今回の暴露が意味するのは、彼らは事実上好きな相手を殺す能力は持っていたが、しかし、誰が敵かを正しく見分ける能力はなかった、という身も蓋もないお話なのだろうなぁと。
これはアメリカだけでなく、ロシアも中国も、今後無人機戦闘が普及する上でほとんど全ての国が必ず通る道ではあるでしょう。私たちは進歩し過ぎた攻撃能力と、まるで進歩しない標的調査能力とに、致命的なアンバランスさを抱えるようになりつつある。



その意味では、先行者利益の為に「とりあえず何となく(軽い気持ちで)ぶっ放してみた」原爆と近い構図ではないかと思うんですよね。アメリカはまさに地獄の窯を開けつつあることを、今回のあまりにも無様な成功率が証明している。
まぁそれを「War is over」なオバマ大統領時代に無人機時代が幕開けつつあるというのはものすごく皮肉なお話ではありますけど。
軍事史としてはトルーマンに並び立つ米国大統領になるんじゃないかな。「一般市民を巻き込むことを承知しながら原爆投下に踏み切り、新たな世界を到来させた」大統領と、「一般市民を巻き込むことを承知しながら無人機攻撃を主軸にすることを決め、新たな世界を到来させた」大統領。


はやく「誰が敵か」正しくテロリストを標的に出来る時代が来るといいね。
――あ、やっぱそれはそれで地獄っぽい。


みなさんはいかがお考えでしょうか?