今も昔もドイツ国民にとっての最大の外交問題

新たな異邦人たちとの付き合い方について。


独市長候補襲撃、動機は難民政策への不満 - WSJ
ドイツ世論調査:難民問題がうまく処理されるとは思わない人増加
[FT]メルケル首相、難民急増でかつてない苦境に(社説)  :日本経済新聞
そういえばドイツさんちは大変だそうで。ついには政治家への実力行使まで。

世論・市場調査研究所YouGovが実施したアンケート調査によれば、移民問題の解決を明言するメルケル首相の言葉を信じる人の数は、ドイツ社会において、ますます減っている。なお調査は、10月9日から13日まで行われ、ドイツ全土の1198名を対象とした。それによれば、メルケル首相のアピールに同意する人は全体の三分の一の32%に過ぎず、他の意見を持つ人が64%を占めた。なお一ヶ月前の調査では、その差は余り大きくなく、メルケル首相の見方を支持する人が43%、「そうは思わない」と答えた人は51%だった。

ドイツ世論調査:難民問題がうまく処理されるとは思わない人増加

うーん、まぁ、そうね。


そもそも論をすれば、戦後外交においては控え目で優等生であることを自負してきたドイツにとっての移民難民問題って(EU関連を除けば)それこそが外交問題の中心である、という位クリティカルなお話なんですよね。敗戦後のドイツにとって世界との関係とはまず経済(貿易)であり、そして豊かなドイツにやってくる移民難民たち、という構図でもあった。
今になって「シリア難民たちは豊かなドイツを目指す」と言われていますけども、それこそドイツの目的地としての価値は今に始まった話じゃないわけですよ。シリア難民というお話が始まる以前から、東欧から、トルコから、中国から、ボスニアから、もうずっとドイツは最終目的地として見られてきたし、その受け入れに地元住民から多かれ少なかれ反発が起きてきた。今のシリアに関わる現状も、ほとんど毎回起きているお馴染みの風景といっていい。
だからこうした流入する人たちとの付き合いのコントロールというのは、現世代というだけでなく、むしろ戦後ドイツにほとんど一貫してドイツ国民にとって身近である故に、最も関心の高い『外交』問題だったのでした。つまりそれこそて国民がドイツ政府に期待することでもあった。流入について、あまり過度にならないようにコントロールすべきである、と。
そうした騒動と長年付き合ってきた彼らドイツ国民だからこそ、例のメルケルさんの「多文化主義は死んだ」というぶっちゃけ発言でもあるし、また彼らの素朴で根深い移民難民忌避という感覚でもあるわけで。


だから現状のドイツ国内に生まれつつある軋轢や不満を、ただシリア危機と結びつけて「今になって唐突に」という見方をすると見誤るんじゃないかと思うんですよね。むしろドイツと移民社会というのはそれはもう根深い関係があるし、一部の跳ねっかえりだけでは済まされないような深みを持つ。特にこうしたドイツの役割はナチスドイツの罪とのバーターでもあって、もちろん表向きに言われることはありませんけども、許した側も、許された側も、どちらも共有していた暗黙の了解。
これまでドイツ国民はどうにかガマンしてきた。さて、本邦でもそうであるように、最早ドイツでも戦後も遠くになりにけり。彼らのガマンは一体いつまで続くのでしょうね?


がんばれドイツ。