「幽霊の正体見たり枯れ尾花」が逆回転するフランス

リアル人狼ゲームへと至る道。




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ということで余波に揺れるパリであります。パリは(別の意味で)まだ燃えている。

今年1月に、風刺雑誌「シャルリ・エブド」の編集部などがイスラム過激主義者によって銃撃され18人が殺害された際、人々はパリは安全だろうかと問いかけた。しかし心の奥底では本当に危険が迫っているとは感じていなかった。
襲撃の標的となったのは刺激的な風刺画を描く作家やユダヤ人だった、と考えて安心していたのかもしれない。
1月の襲撃に抗議した多くの人は連帯を表明したが、標的となった人々が感じた恐怖までは共有していなかった。
今は違う。

パリ連続襲撃事件 広がる恐怖 - BBCニュース

ともあれ、まぁ良くも悪くも今回の事件を受けて「真実」に目覚めてしまう人が生まれるのは避けられないだろうなぁと。まさにあのアメリカの同時多発テロでもそうだったように、最近ちょくちょく書いている、パラダイムシフトで有名なトーマス・クーン先生が言うところの『ゲシュタルトのスイッチ』が押されるフランスについて。
テロリズムのもたらすもの。クーン先生は基本ポジティブな意味で使っていたわけですけども、やっぱりそれはネガティブな意味でも同様なのだと思います。それはその瞬間から、世界の見方が変わってしまうということでもある。これまでは平然と見ていられたモノが、何らかの出来事を経ることで、まるで違う何かに見えてしまう。「テロDE真実!」な世界観へ。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」となる前にあったのは、ただの枯れ尾花をまるで幽霊のように恐れている人たちのお話でもあるわけで。


今のフランスってそれが逆回転する・しかねない状況にあるのでしょう。それは何もそれまである現実が変わったわけでは決してなく、むしろその見る目が変わることを意味しているのです。
実際にかつてのアメリカはイラクに(存在しなかった)『イラク大量破壊兵器』の影というこれまであった疑惑――それこそイラクへの疑い自体は『9・11』以前からずっとあった――を、あの大事件を契機に見るポジションをまったく変えてしまった結果があのバカげたイラク戦争だったわけで。同じ証拠を見ていたはずなのに、それを受けての印象が一変してしまう。



同じものを見ていても、救うべき難民か、潜在的テロリストか、まるで違ってくる。私たち人間にとって、悲しいかなその変化をもたらすものはしばしば『恐怖』となる。
「枯れ尾花の正体見たり幽霊」
語呂が悪いですね。でもフランスが足を踏み入れかけているのってそういう構図なのだと思います。でも仕方ないよね、その「恐怖によるスイッチ」は私たち人間が人間である以上必ず避けられない衝動でもあるのだから。暗がりになんらかの化け物が。リアル人狼ゲームに至る最初の疑心暗鬼。人狼だと勘違いして吊るしてしまう。だからこそ私たちは「正しく恐れる」必要があるんですけども、長くなるのでまた別の日記で。


がんばれフランス。