テロリズムの遠心力

自由かテロ対策か、益々深まるヨーロッパ社会のジレンマ。


【ブリュッセル連続攻撃】なぜこの町が標的に - BBCニュース
ということでベルギーで攻撃があったそうで。ちょうど最近ドン・ウィンズロウの『報復』を読んだところで、あの作品の冒頭に「飛行機をハイジャックするのは象徴的には有効だけれどもそもそも今は警戒が厳しいし、ぶっちゃけその前段階で人混みがハンパない『空港』を狙った方が一杯殺せるよねjk」とあったのは慧眼だなぁと。
パリ攻撃後に特に言われるようになったソフトターゲット論その通りの展開が続いている現代欧州世界。既に中東世界では市場や人混みなどへの自爆攻撃等として始まって久しいそうした攻撃が、ヨーロッパでも短期間に二度目の事例として起きたことは今後の継続性を更に強固に予言するという意味で、単純に死傷者の数だけでは計れない恐怖を生むのでしょう。
恐怖心を抱かせ人びとの行動を誘導する、テロリズムの面目躍如。


ともあれ、そうなると短中期的にはただ言葉や希望でない現実的な対応策として「如何にしてテロを遠ざけるか」という点こそが求められるわけで。

イスラム過激派の脅威がひっきりなしに続くなか、降りかかる過大な負担に警察は明らかに対応しきれなかった。しかし組織的な問題もある。
ブリュッセルは欧州の中では比較的小規模な首都だが、警察の管轄は6つに分かれている。防犯カメラシステムはロンドンやパリに比べると、かなり手薄だ。
「警備レベルが不十分なのははっきりしている。もう何年も前から、警備やテロ脅威に対する努力が不足してきた」とシナルデ教授。とは言うものの、マドリードやロンドン、パリの例からも分かるように、こうしたテロ攻撃を未然に防ぐのはとても難しいことだと教授は指摘する。

【ブリュッセル連続攻撃】なぜこの町が標的に - BBCニュース

ひたすら皮肉だなぁと思うのは――イギリスやドイツあるいはパリ攻撃後のフランスなんかがそうであるように――テロリストに優しくない=つまり同時に一般市民にも優しくない社会では「ない」とされる、ベルギーが標的となった点ですよね。無論そりゃ警備に薄い方を狙うのが常道ではあるので、考えてみれば当たり前の話ではありますけど。だからこそ彼らは厳戒態勢の限りなく近い所に立つ。でもそれってつまり、アメリカ同様に今後益々社会の「テロ対策」が進んでいくことにもなるわけで。


よくある泥棒対策の構図なんかにあるように、一軒の家が対策強化すると泥棒は当然別の家に行くだけ。かくしてヨーロッパ最主要国であるイギリスやドイツやフランスではなく、ベルギーがその標的に。この遠心力は更に続くことでしょう。
まさに正しく治安維持当局者たちの努力によって、益々警戒の難しいソフトターゲットな一般市民へと向かうテロリストたち。


ヨーロッパが多文化主義の名の下に、見て見ぬフリを続けてきた単一文化主義の聖地の一つでもあり今回の舞台ともなったベルギーのモレンベークなど、果たして今後どうなっていくんでしょうね?