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民主主義政治家には向かない政策

「長期的(といってもせいぜい十数年)には任期でみんな死んでいる」


「サダムがいない方が世界にとって良い」 ブレア元英首相 - BBCニュース
イラク参戦はブレア元首相判断に誤り、イギリス独立調査委が報告書 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
そういえば先週のお話ですが、ブレアさんのイラク参戦に関してニュースがあったそうで。

2003年に英国がイラク戦争に参戦した経緯などを調べていた英政府の独立調査委員会は6日、7年間にわたる調査の結果、ブレア元首相の参戦判断や計画策定に数々の誤りがあったと結論付けた。

調査委は、ブレア氏が不完全な情報に依存したとし、戦争を法的に承認した手続きも不十分だったと指摘。参戦の理由とされたイラク大量破壊兵器による脅威は過度に誇張され、戦後計画も適切ではなかったと批判した。

戦争から13年余りが経ったが、イラクはなお混沌(こんとん)とした状況にあり、国土の広い範囲が過激派組織「イスラム国」(IS)の支配下にある。

調査報告書の発表を受け、ブレア氏は会見し、参戦決断にうそや偽りはなかったと強調。サダム・フセイン元大統領を排除することが必要だったとし、「自分が正しい判断をし、その結果、世界がより良く安全になったと信じている」と主張した。

イラク参戦はブレア元首相判断に誤り、イギリス独立調査委が報告書 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

結果として見れば――子ブッシュさんのそれと同様に――間違っていたのはその通りでしょうね。
この参戦過程において、本邦含めまぁ色々と陰謀論が盛り上がった所ではありますが、何度か日記ネタにしたように個人的にはやっぱり「陰謀」というよりはただひたすらに良かれと思ってやった「無能」で説明できるお話かなぁと。


その意味で言えば、結局最初から最後まで「これは戦争ではない」と言い続け事実上の軍事介入を続けたオバマさんはやはり政治家としてすばらしい嗅覚の持ち主だよなぁと感心する所であります。なにせシリアやイラクの現状が証明するように、仮に間違ったとしても「それは戦争ではない」=「決定的に引き金を引いたのは自分ではない」と自身の責任を回避できている(ように見える)から。
何かを一挙に変化させたときの責任の所在は明確になるものの、しかし放置し徐々に悪化していくことへの責任は必ずしも明確にはならない。この辺は本邦の諸問題でもしばしば言われるお話ではありますよね。
――作為による失敗は批判されても、不作為はけっこう見逃される。
子ブッシュさん(ブレアさん)そしてオバマさんの二人の米国大統領が中東世界にそれぞれに残した「傷」ってつまりそういうことでしょう。


さて置き、ここで思考実験として興味深いと思うのは、アメリカやイギリスの政治指導者たちが間違ったというのを前提にして、ではそもそも現代世界において戦争判断で間違わない政治家が居るのか、という点であります。
当たり前ですけど戦争参戦に関わる判断ってそりゃむずかしいわけで。そもそもイラク戦争だって当時の批判者の多くは「大量破壊兵器の存在があったとしても」不当であるというのがメインで、実際にクルド人に使ったイラクならば当然「あるだろう」と思っていたのは賛成派だけじゃなかったわけで。
そんな情報分析としてもそうだし、国内だけでもめんどくさいのに更に多国間の政治的判断が絡むとなればさらに難しい。
この辺は長期視点による『防災』なんかでも言われるお話ではありますが、民主主義政治家と長期判断が関わる問題ってクソ相性が悪いわけですよ。だって正しく民主主義政治の政治家は確実に「長期的には任期で死んでいる」のだから。そんな遠い先の未来の話なんて、それは政治家としてエゴというだけでなく有権者たちの要望としても、無視した方が合理的でしょう。仮にそれをやっても有権者は、必ずしも誉めてくれるわけではない。
まったく同様に『戦後』なんて知ったことではない、と民主主義政治家が考えるのも合理的ですらある。


こうしたジレンマに悩まされながら、戦争について適切な判断を下せるだけの政治家が存在るのかというと、ぶっちゃけごく一部の例外を除けばまず居ないだろうと思うんですよね。
それこそアメリカだって、父ブッシュのイラクのような短期介入なんかに終わった事例を除けば、アメリカ独立戦争の時代から第一次第二次にベトナムユーゴまで、ほとんど常に戦争参戦時にあった判断って予想を外し続けてきたわけで。
子ブッシュさんやブレアさんに限らず、古今東西、民主主義政治家たちは参戦判断にあって「こんなはずでは」と言い続けてきた。


まぁそもそも参戦判断した時点で無能だと言っては身も蓋もありませんけど、でも間違ったこと自体は責められないかなぁと思ったりします。
国民投票は民主主義四天王の中で最弱 - maukitiの日記
ぶっちゃけカオス要因の強い未来を予想するのは、ただでさえ任期と権限に限りある民主主義政治家の能力の限界を超えているよね。そんな状況に追い詰められるくらいなら、いっそ国民投票で事実上政治家の役割を放棄しちゃった方がいいとすら言えるかもしれない。


でもこれを是にすると、ならば「いつかくるかもしれないものの今ではない」な大地震や気候変動問題だって、現代民主主義政治家が取り組むには能力の限界を超えていると言えるのかもしれない。
そう考えると現代に生きる私たちが見る「こんなはずではなかった」な政治の有様も、ちょっとは納得できるかもしれない。できないかもしれない。


正しく「長期――どころか短期的にはみんな死んでいる」故の現代民主主義政治家たちの限界について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?