「それでもアレは安全なのだ」と言えない程度の悲劇

私たちの心を支配するもの。


コロンビアで旅客機墜落 ブラジルのプロサッカー選手ら搭乗 - BBCニュース
墜落チャーター機、「燃料切れ」と交信 コロンビア当局も確認 - BBCニュース
ということで大騒ぎだったそうで。まぁなんというか実際にこうしたチーム丸ごと墜落って過去事例がないわけではないし、想定できてしまう悲劇ではありますよね。重要人物がまとめて乗っていたせいで一網打尽。フィクションでもクーデターものなんかではありがちな展開でもあります。


もちろん彼らは当然の大前提として「チャーター機」で行っていたわけでもすけども、

コロンビアの民間航空当局の責任者アルフレードボカネグラ氏は記者会見し、「墜落現場を捜索した結果、機体が地面に激突した瞬間に、機内に燃料はなかったと確認した」と述べた。
同じ記者会見で、民間航空局のフレディー・ボニリャ氏は、規則では航空機は緊急時に別の空港にたどりつけるよう30分の予備の燃料を搭載しなくてはならないことになっていると説明。
「この事故機にはそれがなかった」とボニリャ氏は述べ、さらに「燃料がなければ電気系統はまったく使い物にならない」と話した。

墜落チャーター機、「燃料切れ」と交信 コロンビア当局も確認 - BBCニュース

なのにこうなってしまうっていうね。一般にはこうしたチャーター機って普通の定期便以上の安全策が講じられているわけですよ。航空会社にとっても今回の件のような「万が一の」時の事故ってダメージがずっと大きいから。悲しいことに人の命の(金銭的)価値は平等ではない故に、VIPたる彼らはより保護される。
――なのにこうして墜落しちゃったわけですけど。
おそらくこの壊滅で致命的な被害を受けたのは、この悲劇のチームだけでなく、この航空会社自身なのでしょうね。自業自得でもあるんですけど。彼らはよりによって本当に大事にすべき乗客を堕とした。この衝撃はもちろん「ついでの荷物」でもある私たち一般客にとっても選択の基準となるだろうし、更にはより慎重な安全策を求めるだろう=失うモノも大きいVIPたちも同じくらい影響を与えることになる。


ともあれ、やはり再び飛行機危険神話は強化されてしまうのでしょう。昇り調子だったサッカーチームが一瞬にしてほぼ全滅。この物語を無視するには、あまりにも悲劇が悲劇として完成度が高すぎる。ただの大人のオッサンが溺れて死ぬよりも、無垢な子供の死体が岸辺に打ち上げられる方がずっと悲劇である。
こうした時に吹き荒れる感情というのは、まぁ理屈じゃないわけで。上記子供の溺死ニュースで盛り上がり過ぎてアレな事態に突入したヨーロッパだけでなく、私たち日本においても原発事故云々で経験したお話ではありますよね。
あなたのその電力は血の輝き - maukitiの日記
ただ統計上で見れば死亡率が低い危険性は、しかしそこに(悲劇な)物語性が付与されるとそれは実際の数字以上の動揺を人びとに与え、記憶に強く残ることになる。飛行機はやっぱり自動車よりキケンなんだ! なんて。


大きな悲劇は記憶に残るが、無数の小さな悲劇はそうでもない。
でも仕方ないよね。にんげんだもの