エリートたちの連帯vsポピュリズム的民主主義

あ、これ歴史の教科書で見たところだ!



メルケル首相「欧州が他国に頼れる時代は終わった」 | NHKニュース
アメリカが居なくなることで」軍拡が始まるという構図の典型例という感じ。

ドイツのメルケル首相は、先週出席したG7=主要7か国首脳会議などを振り返り、アメリカのトランプ大統領を念頭に「ヨーロッパが他国に頼れる時代は終わった」と述べ、ヨーロッパが地球温暖化対策などを主導していく必要性を訴えました。
先週、NATO北大西洋条約機構の首脳会議とG7首脳会議に出席したメルケル首相は、ドイツ南部のミュンヘンで、「ヨーロッパが他国に完全に頼れる時代はある程度終わったと、私は、この数日で感じた」と述べ、名指しはしなかったものの、アメリカのトランプ大統領への不満を示しました。
そのうえで、メルケル首相は、アメリカとの友好関係の重要性を指摘しつつも、「ヨーロッパは、自分たちの運命を自分たちで切り開いていくしかない」と述べ、ヨーロッパが地球温暖化対策などを主導していく必要性を訴えました。

メルケル首相「欧州が他国に頼れる時代は終わった」 | NHKニュース

アメリカが頼れない以上自衛するしかない、というのは(本邦ではウケが悪いでしょうけど)まぁ正論ではありますよね。以前からNATOを通じて軍事費増加を要請され、概ね受け入れているヨーロッパの現状について。その行き着く先がこうした独立宣言というのはやっぱり理解できるお話ではあります。
イギリスだけでなくアメリカすらも、最早我々とは違う道を行きつつあり故に独立して進むべきだというメルケルさんの宣言が意味しているのは、これはまであったはずのリベラルな欧米国家指導者たちの連帯の綻びでもある。


面白い歴史の再演という感じなのは、こうした「国家指導者同士による国家を超えた連帯」って昔もヨーロッパにあってそれが実際に欧州の平和を実現していた時期が確かにあったんですよね。19世紀後半から第一次大戦直前まで、君主同士、外交官同士がお互いに貴族的価値観の下知り合いとしての暗黙の了解が平和に寄与していた。
――まぁそうした『連帯』は、民主主義時代がやってきて各国国民たちの意思が外交政策に反映されるようになるとある意味傲慢な平和は終焉してしまうわけですけど。連帯が尚も続いていくと信じてしまった誤解の果てが、ついには第一次大戦の原因の一つともなった。
トランプさんの登場やイギリス離脱の国民投票を考えると、今の状況も近い所にあるように見えてしまうのはやっぱり面白い歴史の教訓かなぁと。国境を越えた各国エリートたちによる連帯が、ポピュリズムな民主主義によって破綻するという歴史の再演へ。


確かにメルケルさんは、その手腕によって経済面としても政治外交面としてもドイツをヨーロッパ中核国たらしめた。その剛腕さをヒトラーに例え批判する人は少なくありませんでしたけど、欧州エリートの連帯がこうした民主主義的カウンターを食らっているのを見ると、メルケルビスマルクさんっぽい感じ。


良くも悪くも私たち日本人が考える所の『国際社会』たる彼らから、イギリスが消え、アメリカも消えつつある。果たしてこれはただただ米英だけの失態なのか、それともエリートなリベラル国家指導者たちが持つ同胞意識のおわりのはじまりなのか。


みなさんはいかがお考えでしょうか?