「そろそろ戦わなきゃ、現実の中国と」

いい加減見て見ぬフリを続けられず、旗幟を鮮明にすることを迫られつつある私たち。


トランプ氏、貿易交渉のため対中制裁を見送り ウイグル人強制収容めぐり - BBCニュース
うーん、まぁ、そうねえ。「トランプの選挙配慮要請があったのかなかったのか」がこのニュースにおける本題ではありますけども、でもまぁ現代国際関係の本質としても色々と重大な問題を突き付けているお話だよね。
――無邪気に「反中!」と平常運転で訴えればいい人たちはともかく、リベラルな私たちにとっては尚更。
前回通常日記でも少しだけ言及した、中国の人権問題に対しての私たちの採るべき態度とは一体どういうものになるのか問題。

Axiosによると、ウイグルの収容施設問題をめぐる中国共産党幹部に対する追加制裁を保留にしていた理由を問われたトランプ氏は、「まあ、大きい貿易取引の真っ最中だったので」と答えた。

「それに、交渉の最中に突然、追加制裁を始めるのはどうだろうか。すでにたくさんやっていたし。私は中国に関税をかけた。どんな制裁よりこの方がひどい」

トランプ氏、貿易交渉のため対中制裁を見送り ウイグル人強制収容めぐり - BBCニュース

ここでBBCは「貿易交渉のため対中制裁を見送り」と批判的に書いていますけども、それって言い換えれば「貿易交渉よりも対中制裁を優先させるべき」という意見でもあるわけですよね。
そうだよね。確かに中国に人権問題を改めさせるためにはそれもしかたないかもしれない。
人類全体を射程に入れた『普遍的』なリベラルという価値観を前提にするならば。


しかし、もちろん世界はただそれだけの価値観で成り立っているわけもなく。
冷戦終結からしばらくまでは、無邪気な私たちの一部が歴史すら終わると考えていたそれは、しかし中国の台頭によってその確信は揺らぎつつある。
――ということは、やっぱりトランプさんのように貿易問題に理由に中国の人権問題に多少目を瞑ったっていいんじゃない?

  • そんな道徳相対主義なポジションに立つならば、欧米的人権意識を中国国内のそれに当てはめる方がおかしいと回避することもできる。
    • しかしそれはリベラルと名乗るをの諦めるという事でもある。

 

  • あるいはリアリズムのポジションに立つならば、最早中国の経済規模・軍事規模には到底敵わないのだからイデオロギーで敵対しようとするのは、愚かだと回避することもできる。

 




これまでは、まさに無邪気に「我々の投資によって中国の経済発展が進めば政治は民主化し引いてはその人権問題も解消していくはずだ!」と楽観していた私たち。
――ところがぎっちょん、結局2020年になっても中国は民主化しなかったどころかむしろ後退しているし、
人権問題も改善されなかったどころかむしろ悪化している。
中国が香港国家安全法可決 複数報道「一国二制度」形骸化:東京新聞 TOKYO Web
現実は非常である。


かくして我々はこれまでも薄々感づいていながら見て見ぬフリを続けてきた中国に対して、楽観的な夢みたいな未来予想ではなく厳しい現実と向き合わねばならなくなっている。
我々の基準に照らせば、どう見ても致命的な問題を抱えている中国に対して、一体どういう態度で臨めばいいのか?
政治的弾圧や人権問題をお金で黙るんですか?


――対する中国はそういう風に我々が振る舞うことこそが地域ひいては世界の安定に繋がると期待している。
まぁ確かにそれはそれでその通りかもしれないね。中国の言うことにも一理ある。
まさに中東に民主化を押し付けようとしたネオコンが地域に致命的混沌をもたらしたように。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:アン=マリー・ブレイディ - Wikipediaによれば、過去20年における中国のプロパガンダの最優先項目は、中国国内の拷問や抑圧についての批判を回避することにあった、と指摘している。(『目に見ぬ侵略』第12章)