任命拒否じゃダメなんでしょうか?

10年を経て帰ってきた「既得権益をぶっこわせ!」という我々庶民のそぼくなよくぼーにこたえるせいじかたち。





東浩紀「日本学術会議の任命拒否問題は菅政権のしたたかな戦略かもしれない」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
菅首相が学術会議人事で大ナタをふるった本当の理由 (1/2)
東先生や御田寺圭さんの割と同意できるお話。

 拒否された候補はいずれも政権批判の過去があり、学問の自由の侵害との声が高まっている。政権は、任命権は首相にあると主張しているが、それが37年前の国会答弁と矛盾していること、また拒否理由を開示していないことも非難を強めている。有識者や各学会からも批判が相次いでいる。当然の反応だといえる。政府には丁寧な説明を求めたい。

 しかしその前提のうえで考えたいのは、なぜいま菅政権がこんな「暴挙」に乗り出したかということである。むろん言論統制の欲望は確かだ。任命拒否は明らかにイデオロギー的な理由で行われている。

 だがその欲望が高支持率を背景に暴走したと捉えるのはいささか素朴すぎる。政権は任命拒否が強い反発を呼ぶことはわかっていたはずだ。それでも「勝てる」という計算が働いたのではないか。

東浩紀「日本学術会議の任命拒否問題は菅政権のしたたかな戦略かもしれない」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

一見バカな暴走をしているように見えて実は彼らは勝算があって――つまり我々国民も『日本学術会議叩き』に同調するだろう、と考えているのかもしれないと。
「学術会議は千人計画に協力」甘利氏修正 誤り指摘受け [日本学術会議]:朝日新聞デジタル
甘利さんが言っていたようなデマやフェイクニュースは論外だとしても、しかし実際に少なくない同じ学者という身内からもその制度や慣行に批判がされている構図があるのも間違いないわけで。

でもこれまで散々「民意を知らしめるのだ!」と煽られてきた民主主義を愛する私たちにそんな正論を今更言っても通じるかなあ~???
ぼくはむりだとおもうよ。
――皮肉にも左右から「もっと政治に目覚めよ!」と有権者たちを煽ってきた結果が、こうした『学問の自由』に介入することがポピュリズムな世論として正当化されかねない構図を生んだんじゃないかと。
任命拒否という横暴に抵抗しようとする人たちの思惑通りに菅政権の行為は「政治問題化」しつつあるものの、しかし、皮肉にも、まさにそれ故に、今回の件は世論として許容されつつある。
一部の冷静な弁護士さんたちが当初から言っていたように、粛々と法律問題にしておけばよかったのにね。

現代日本社会におけるマリーアントワネット的寓話 - maukitiの日記

先日の日記でも触れましたけど、これまで散々「民意を聞け!」と煽られてきた私たちは、一体今回の件でどのような判断を下すことにするのでしょうね。
その意味ではこの問題に反発する人たちは気勢を上げて熱心に与党批判に結びつけていますけども、それって結構危うい手法だとも思うわけで。政治問題化させるということは、つまるところ、国民世論がアウトだという空気になればもちろん菅総理の失点となるでしょうけど、もしセーフだという空気になれば以下略。
当事者である学者サマたちはともかく、はたして便乗して与党批判に結び付けようとする人たちはそこまで考えてるでしょうかね。
これまでの安倍政権時代を考えると……、うん、まぁ、そうねえ。





ともあれ本題。ただ、改めて考えてみると、今回の件っていつかの「事業仕分け」っぽいなぁとちょっと思う所ではあるんですよね。
政権誕生からいきなり突っ走ってしまう人たち。
あの時も「歳出削減を目指し、外部の視点を入れて国や自治体の事業を問い直す」なんて言っていたんですよね。

 菅義偉首相は16日で就任から1カ月を迎える。就任直後から、役所での押印廃止や携帯電話料金引き下げなどの検討加速を矢継ぎ早に指示。「スピード感」(首相)を持って成果を得ようと躍起だ。一方、就任2週間で日本学術会議が推薦した新会員候補6人を任命しなかった問題が発覚。政権は推薦された全員が任命されてきた前例を「打破すべき既得権」と位置づけて状況転換を図るが、説明不足は明らかだ。26日召集予定の臨時国会の紛糾は必至で、今後の政権運営を占う最初の関門となる。

学術会議「最初の大失敗」 “せっかち”菅政権1カ月 成果に躍起、怠る説明 - 毎日新聞

 2009(平成21)年の政権交代直後、民主党政権の施策で最も国民の注目を集めたのは「事業仕分け」だった。歳出削減を目指し、外部の視点を入れて国や自治体の事業を問い直す。国会議員やシンクタンクのスタッフらが公開の場で高級官僚を問い詰めるシーンがドラマのようでテレビ映えすることから、政権のイメージを代表するイベントに。

「2位じゃダメなんでしょうか?」はそこまで批判される発言だったのだろうか | 私が令和に語り継ぎたい「平成の名言」 | 文春オンライン

「外部の目を入れて」既得権益をぶっ壊そうとする人たち。
いやあかつての民主党らしくなってきましたよねえ。あの時の事業仕分けだって専門知識を持たない政治家たちによる『ショー』がそれなりにウケのは間違いなかったわけだし。今回もそうなるんじゃないかな。
民主党の成功体験に支配される自民党と維新の会 - maukitiの日記
正しく民主党政権の遺産を受け継ぐ自民党政権
人民の声を代弁していると叫ぶ政治家たちの、既得権益をぶっ壊すしぐさに熱狂する私たち。
うーん、ザ・ポピュリズム
良くも悪くも控え目だった安倍政権からこんなことになるなんて。
――いや、こうして原点回帰している現状を見てみると、安倍政権時代がむしろ異端だったのかもしれない。
ようやく、今更、ついに、あの歴史的な政権交代に成功した旧民主党政権以後の日本政治が始まるのかもしれない。




旧民主党自民党、どちらも科学技術研究に冷淡だという政治の一貫性は担保されていて、それはそれで日本政治の歪な一貫性であり誠実さなのかもしれないね。
政治なんて誰がやっても同じだという事を証明してしまっている。
日本学術会議「関係ない」ツイートが炎上の西田亮介氏 「今回のことで学問の自由が死ぬのであれば、我々はもう死んでいる」(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
「もし今回のようなことで学問の自由が死ぬのであれば、“我々はもう死んでいる”と言わざるを得ない」なんて。
まぁしかたないよね。政治家はわれわれ国民の意見をきくべきなんだもん!



これからも学問の自由が尊重されていたらしい(要出典)、日本でありますように。