殿、国連が燃えております

元々創設時点から欠陥設計だったからね。しかたないね。



【解説】 自らをピョートル大帝になぞらえるプーチン氏、その思惑は? - BBCニュース
プーさんがぶっちゃけトークをしていたそうで。

公然と自分を皇帝ピョートル1世になぞらえ、現在のウクライナ侵攻を約300年前の膨張主義と同一視し、この戦争は領土収奪のためのものだと、これまでで最もはっきり認めた。

ピョートル1世は17世紀末~18世紀のロシア皇帝で、ロシア近代化のほかに大国化を推進。大北方戦争スウェーデンと長年にわたり領土戦争を繰り広げた。

帝国づくりを目指すプーチン氏のあからさまな野望は、ウクライナには凶報だし、他の近隣諸国にとっても不穏だ。エストニアは、プーチン氏の発言を「全く受け入れられない」と述べている。

【解説】 自らをピョートル大帝になぞらえるプーチン氏、その思惑は? - BBCニュース

さすがに領土収奪を口に出してしまったら戦争だろうが、と思いましたけどもう戦争してましたわガハハ。
こうなってしまっては本邦にも少なくない素朴に平和を愛する人たちのように『対話をしよう!』と言ってもまったく問題解決に寄与しない――だって当人に領土収奪と率直に認めている以上その気がない――ので、別の方法を考えなければいけなくなる。
「一体、誰が、侵略者に立ち向かってくれるのか」について。


ここで面白いというか、皮肉というか、我々の進歩のなさというか、先人たちのツケを支払うことになっているのは、この問題って現在の国際連合が生まれる時にその主導権を握るアメリカで想定されていた――そして最も意見が分かれる議論の一つでもあった、問題そのまんまなんですよね。
つまり、ルーズベルト政権下及び戦後外交政策諮問委員会で想定されていた基本的な相違点とは、「侵略行為への対抗決定がいかに行われるか?」ひいては「どの軍隊が戦闘するのか?」という点でありました。
ウィルソン主義なヘンリー・ウォレスなどは、もし経済制裁が侵略者を止められなければ「ただちに多国籍空軍部隊が爆撃すべきだ」と主張していた一方で、リアルポリティークの現実を見れば、アメリカの孤立主義*1という意味でも国家主権と自律という意味でも、それは不可能だった。
かくしてその理想と現実の絶妙なバランスの上に生まれた妥協案として拒否権を持つ安全保障理事会は誕生し、当時から解っていた設計上の問題に今も我々は悩み続けている。




ここでまたしても愉快な歴史のアナロジーとなっているのは、上記ウォレスなどのように国連軍というアイディアを想定していたのは「ヒトラーのような」侵略者に対して「ただちに空爆する」というポジションでもあったわけで。
あれから80年後プーチンウクライナナチスと呼んで、まさに平和を守ると称してそれをやっているのは皮肉な構図だよね。そしてルーズベルトの『4人の警察官』という初期のアイディアというそれぞれの勢力圏で『平和』を守る4人の警察官という意味でも同様に。
当時から難しいと思われていたことを堂々とやっているなんてさすが核兵器平和を愛するロシアやね!


1943年ごろに想定されていた機能不全な事態を、結局2022年になっても繰り返している私たち。
こういうことが起きない・起こさせないための国連であったはずなのにね。
しかし素晴らしきルーズベルトの政治手腕によって、欠陥設計ながらも見事に国連は誕生し、冷戦を終えてようやくその本領を発揮する時代がやってきたものの結局当時からあった欠陥設計のツケを今払わされている。
その意味では、まぁやっぱり現代に生きている誰かの責任だというのはちょっとフェアではないよね。もちろん改善できなかったことの罪はあるものの、結局のところ第二次大戦後当時から今に至るまでずっと「侵略行為への対抗決定がいかに行われるか?」についての答えは出せなかったのだから。



「一体、誰が、侵略者に立ち向かってくれるのか」について。
まぁ元々パワーポリティクスこそが人類世界の常態だと考えている人であれば、そんなの「解無し」であると冷笑していればいいんですよ。
しかしそうではない人にとって、少なくともマクロな世界平和を望む人たちにとって、これは最も重要な問いかけである。「次」こそはもっと上手く戦後秩序を構築できるといいね。
世界平和を望むみなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:そのせいで前回の国際連盟アメリカは参加するのに失敗した。