リベラルではない民主主義政治を目指す光の戦士たち

そりゃ日本にもプーチン習近平を支持する人たちがいっぱいいるわけだよね。



岸田首相の演説会場に爆発物投げ込む、男を現行犯逮捕 和歌山市・衆院補選応援で - BBCニュース
ということでまたもや政治家への襲撃があったそうで。うーん、戦前かな?

岸田文雄首相の選挙応援演説で爆発物が投げ込まれた事件で、威力業務妨害容疑で逮捕された無職、木村隆二容疑者(24)が年齢などを理由に昨年7月の参院選に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国家賠償請求訴訟を神戸地裁に起こし、棄却されていたことが18日分かった。木村容疑者は判決を不服として大阪高裁に控訴した際は、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を踏まえ「既存政治家は統一教会の組織票で当選している」と選挙制度や現状の政治に対する不満を訴えていた。

木村容疑者、現行政治に不満か 「統一教会の組織票で当選」と訴訟で主張 - 産経ニュース

あ~ネットの石の裏をひっくり返した際に蠢いている感じで見たことある奴~。


ともあれ、でもまぁこうした暴力行為によって選挙結果を変えようとする行為自体は『リベラルな(ここ重要)*1』民主主義だとはまったく言えないものの、ある種の民主主義制度の一つだという事は確かにできなくはないんですよ。
それこそ政敵をどんどん暗殺するプーチンや、複数政党制の公正な選挙からは反対の極地にある中国共産党一党独裁など、彼らだって彼ら自身の独自の『リベラルではない(ここ重要)』民主主義を自称しているわけで。その意味で今回のような独自世界に生きている彼が、爆発物投げ込むことが民主主義だと信じていても不思議ではない。
実際プーチンも似たようなレベルなわけだし、まったくリベラルとは言えませんけどまぁ別にリベラルではない意見を言う自由だってあるわけだしね。


一方でそのグラデーションはもちろん概ねリベラルな民主主義政治を自称する私たちの方にも少なからず広がっていて、上記中国やロシア程ではないにしろアメリカのトランプ派がやっていること、そして我々の政治家への物理的襲撃の擁護のように。
――我々こそが正しい民主主義政治なのだ、という声とともに。
その意味で、彼がやっているのは一周遅れているようでやっぱり現代世界における最前線のテーマでもあるんですよね。
「欧米リベラルの方は紛い物であり、我々の方こそが正しい民主主義なのだ!」なんて。
『概念のすり替え』という現代世界の国際秩序を巡る大乱闘に日本共産党が参戦! - maukitiの日記
先日も日本共産党中国共産党に負けじと独自のユニークな民主主義論を訴えていて愉快な日記ネタにしていたんですが、まぁ今回の件もその延長線上にあるお話なのでしょう。
民主主義政治を巡る概念の争いについて。
ここで皮肉というか面白いのは、現代世界では結果として中国やロシアや果ては北朝鮮まで独自の民主主義を訴える人たちって『民主主義』という言葉の裏に「人民の為に」という大義名分を見出しているところだとは思うんですよね。
これは国民の為にやっているのだ、と嘯きながら政敵を抹殺し弾圧するような人たち。
今回のようなミクロのテロ実行犯からマクロな独裁国家まで、その民主主義という大義名分が一緒なのはちょっと面白いよね。



ということでこんな胡乱な現代世界においては、爆発物を投げ込むことが民主主義を救うのだ、って考える頭おかしい愉快な人がいても不思議じゃない。お隣を見れば、プーチン習近平とかいう人たちだって似たようなことをやっているのだから。
リベラルな民主主義を支持する僕はまったく賛成できませんけど。
現代日本の民主主義制度には欠陥があり――それ自体はまぁ確かに正しい――自らの考える民主主義こそが、真の正当なる民主主義なのだと叫び行動する光の戦士たち。
みなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:ここではリベラルの定義について以下、ジョン・グレイの自由主義への批判的立ち位置から見た「リベラル」な価値観に基づいた法の支配によって、行政権を制限している、としています。