難民こわい

勿論それはブラフなんだろうけども、しかしそれを言い出す程度には危機感を抱いているということでもあるんですよね。そんな現代世界が抱える構造的欠陥のひとつのお話。


時事ドットコム:難民は「欧州の課題」=問題の島で負担共有訴え−伊首相
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110413/mcb1104130506033-n1.htm

 イタリアは、他の欧州連合(EU)加盟国が北アフリカの混乱を逃れてきた大量の難民の支援を拒否し、イタリアがこの問題に自力で対応するよう圧力をかけられたことを受け、EUに加盟している妥当性に疑問があるとして、EUからの脱退をにおわせている。

 イタリアのマローニ内相は11日、ルクセンブルクで開かれたEU内相会合後に記者団に対し、「イタリアは独りきりにされている」とし、「この状況でEUの一部にとどまるのが妥当かどうかと考えている」と語った。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110413/mcb1104130506033-n1.htm

実際このお話って、日本では遠い世界であまり縁のないお話なんだけど、多くの国際政治学者な人びとが昔から警告を発してきた事態ではあるんですよね。例えば国際関係の悪化やあるいは環境破壊のそれと、同列に語られるべき国際的規模の危機の一つとして。
つまるところ、大規模な移民や難民による人口移動によって、その地域の不安定化を招く恐れがある、と。
まぁ最近のヨーロッパやアメリカの動きを見ればよく解るお話で、あるいは日本での議論を見てもよく解ります。それは、もちろん建前としては反対の事を言ってきているんだけど、しかしそれでも『移民』の嫌われっぷりは世界における人類普遍的なものの一つでもあるわけで。そうした意見に対して例えば上述の欧州連合の試み、国家間の往来の自由化*1、を以って反論することもできるんだけど、やっぱりそんなシェルゲン協定も欧州内に限定されてしまうわけでもあります。そして欧州外のことに関しては上記イタリアのように「そんなことには関わりたくない」と明確に拒絶されてしまう。
まぁそれも当たり前ですよね。別に彼らが特別に酷いわけではなくて、ただ最も優先すべき自分の国の安寧を守りたいだけなんだから。


結局の所こうした危機が存在しているということが、一般に先進国に生きる私たちががんばって後進国の人々を援助している理由の一つでもあります。もし周辺の国が経済的・政治的に不安定化して、自分の国の周辺に押し寄せてきてしまったら破滅的な事態が起こってしまうだろうという確信に近い予測。
それが現在起きているリビアなど北アフリカとヨーロッパの問題を説明する一端でもあるし、またこの例で言えば、日本にもすごい思い当たる節がありますよね。まさに北朝鮮の体制をロクでもないものだと思っている一方で、しかし金さんの独裁体制がもし崩壊してしまったら、のことを考えると現状維持を望む以外にないという構図。


ある一国の失敗によってその難民が隣国に押し寄せて、結果その押し寄せられた国家まで不安定化して、また更に隣の国まで押し寄せて……、という負のスパイラル。現代アフリカでは現実にちょくちょく見られる光景ではありますけど、しかしそれが他の地域でも起きないなんて楽観視はとてもできない。
そのように考えると、今回のイタリアさんちの動揺っぷりも切実な悩みなんだろうと思うし、リビアの騒乱に必死になるヨーロッパさんの気持ちも理解できなくはないですよね。あとアメリカさんの他人事っぷりも。
それは利権や権益というものも勿論あるんだろうけど、しかしそれだけではない彼らの「危機感」の表れでもあると。