地獄とは所得の格差なり

メキシコさんちの避けようのない悲劇のお話。


麻薬抗争の町に20歳の「女子大生警察署長」誕生、メキシコ 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
これが、
警察署長引き受け「無知だった」、メキシコから逃亡の元女子大生 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
こうなると。
就任した時にも結構なニュースになりましたけど、こうしてやっぱり(大方の予想通りに)失敗し逃亡したとニュースになってしまう。そんなメキシコのどうしようもない麻薬戦争の一端ではあります。まぁオチとしては彼女が生きてただけ良かった、という辺りなんでしょうか。救えないお話ではありますよね。


さて置き、この構図において、一体何が元凶なのだろうか?
ここまで放置したメキシコ政府当局なのか、あるいは適切な国境管理を怠ったアメリカ政府なのか、麻薬を求めたアメリカの人びとなのか、あるいはメキシコの人びとの努力が足りなかったからなのか。


と、その理由を考えた場合に最終的に導かれるのが結局の所「アメリカが豊か過ぎたからだ」というほんともう救えない結論になってしまうんですよね。
つまるところ、いつだって社会不安が増大するのは「全員が貧乏」な場所ではなくて、「富者と貧者が同居する」場所であるから。
その意味で世界で最も豊かなアメリカと国境を接するメキシコの都市がこうした地獄絵図となってしまうのは、人びとの努力が足りないからでも、あるいは偶然にこうなったわけでもなくて、必然的に避けられない運命だったと言うしかない。
よく治安最悪の都市としてネタにされる南アフリカヨハネスブルグだって構図としては同じなんですよね。あそこは勿論治安悪化もそうなんだけれど、でもそれ以上に急速に経済発展を遂げてもいた。だからこそ、その負の側面として、あそこまでひどい状況になってしまったわけで。治安の悪さばかりネタにされますけど、前回サッカーワールドカップをやったのだって別に伊達や酔狂でやっていたわけではない。
人びとはいつだって金のある所に集まり、そしてその流入による人口増大は確実に社会不安を招く。
まぁこんなことは200年以上昔にアダム・スミス大先生が『諸国民の富』で仰っていたわけでもあります。

「富者の豊かさは、貧者の怒りをかきたて、彼らは欠乏に駆られ、同時に、妬みにそそのかされて、しばしば、富者の所有物を侵すにいたる」

こうしてアメリカ―メキシコの国境線は、世界でも最も人口移動が激しい陸路国境線となり、同時に上記メキシコの地獄のような犯罪都市が形成されてしまう。それはある意味でアメリカ国内での側での犯罪対策がそれなりに成功していることの証左でもあります。アメリカ側でそれができないからこそ、メキシコ側ではご覧のありさまになってしまっている。
世界で最も金持ちがすぐ近くに居るからこそ、麻薬等の犯罪によるリターンもまた大きくなり、そして彼らはより手段を選ばなくなっていく。


メキシコのすぐ向こうにあるアメリカが発展しすぎたことこそが、最大の誘因となって。