『エヴァQ』見てきた

成長しているギミックと、「まるで成長していない」キャラクターたち。


ということで今更ながらに見てきました。公開からもう10日以上経ったし、ついでに平日昼間と言うこともあってすげーガラガラでした。
今更感がありますが、一応致命的なネタバレは避けてはいますけども、あまり気にせず適当に適当なことを書いているので気になる方は退避を。



以下、興味ない人とネタバレごめんなさいの続きを読む。

























えーと、まぁ多くの人が指摘しているように短かったよなぁと。話的にはまるで進んでいない。
いやまぁその分中身がよく出来ていたのかと言えば、大変よく出来ていたと思うので、まぁそれは良いんですけども。特に軌道上での戦いとか戦艦とか大好物です。そういう方向に進化するのかーという感じ。


ただまぁそんなメカ的な意味での進化の一方で、悲しいまでに人間として「まるで成長していない」のが相対的により一層クリアになってしまって悲しくなるなぁと。元々テレビ版の時からシンジ君云々と言うより「登場する大人たちが揃いも揃ってまるでダメ」というアニメではあったものの、それに更に拍車かかっちゃった感。
特に今回なんて、シンジ君以外の人たちは長い年月経過しているはずなのに、ご覧の有様ですよ。
そんな中で人間的に唯一成長しているのがアスカだった、という点が僅かな救いであります。そりゃ「ガキ」って連呼しちゃうのも理解できますよね。


テレビ時代からの伝統的な突っ込み所ではあるんですが、なんでこの人たち徹頭徹尾人間関係において「寝技」をやる気が無いのか。今回もそれは同様でいっそもうスガスガしいほどです。IQというよりEQが致命的に足りていない。研究職や専門職はともかくとして、組織においてよくそれで出世できたなぁと心配になってしまいます。
その意味でカヲル君が唯一の清涼剤になってしまったのは多くの人が指摘している所で、特にミサトさんとかもう少し優しいウソ――ぶっちゃけ情報統制すればいいだけでそれすら必要ない――をついてあげればいいのにね。周囲の大人たちの致命的なメンタルケアの欠如。その癖お説教ばかりは一人前。こんな職場で働きたくない。
それでもネルフ時代は、ゲンドウパパなどの上層部の意向があってそうできなかった(介入できなかった)と言い訳できるものの、しかし別組織になってでも何故かそれを伝統として維持しているのには苦笑いするしかありません。いやまぁこの後もその理由が語られるのかもしれませんけど……もしかしたら。タブン。


そもそもシンジ君なんて高価なパイロット――どころか替えのきかない最上級のVIPじゃないですか。その保安を24時間体制で監視されている描写というのはありましたけども、人間関係でもそれをやればいいんですよ。完全に情報統制下において、ウソでもいいからにっこり笑っておけば問題の半分くらいは解決しそうなのに。
身も蓋もなく言ってしまえば、人間関係=情で対象を支配しようとするのは基本中の基本でもあるわけで。
だからこそ例えば北朝鮮に拉致された人たちなんかは向こうで結婚して子供をもうけさせられているんですよね。そしてそれは解っていても多くの人はそれに縛られてしまう。金や情でモチベーションの維持と支配できるならば、喜んでそうするべきなんですよ。コストとしてはたいしたものじゃないんだから。
ヤマアラシのジレンマね(キリッ」とかやってる場合じゃない。「本人のジシュセイヲソンチョー」なんて犬に食わせればいいんですよ。
相手は精神的に未熟で、それは扱いにくさであると同時に弱点でもあるでしょう。そこにつけ込めばいいんですよ。人類滅亡回避というリターンを考えたらやらない理由はない。それなのに「また」リスクマネジメントに失敗し、カヲル君につけ込まれ、少し優しくされただけでホイホイついていってしまう。それは明らかに管理責任上の過失でしょう。物理的に支配するんじゃなくて、精神的に支配する事がまるでできない人たち。
特にシンジ君なんて明らかにチョロインじゃないですか。……いやまぁめんどくさそうなのは否定しませんけど。仕事と割り切るんだ。
新人オペレーターを増員するくらいならそっちを増員すればよかったのにね。ところがシンジ君のの重要度が上がるほどに、むしろ扱いはゾンザイになっていくという喜劇。そりゃ彼もキレちゃいますわ。


まぁ情を切り離せないからこそ、クソ真面目に真正面からバカみたいに愚直に「一個の人間として」対等に付き合っているとも言えるんですけど。そしてだからこそ「碇シンジ君の物語」でもある。
かくして大人と子供が全力でグルグルパンチしあっているお話に。
――そうは言っても、マジでそこをどうにかしてしまったらエヴァの物語そのものが成立しなくなってしまうので、空気を読めない野暮な突っ込みということでひとつ。




技術は進化させることができても、しかし肝心の人間はいつまで経ってもアナログなままなんだなぁと、なんだかとても悲しくなってしまう。そんな映画でした。