中国国民の『知る権利』の抑圧に、私たちは喜べばいいのか悲しめばいいのか?

彼らがそれを抑制しようとすればするほど『反日』も抑制される構図。




>中国が締め付け強化、ビザ更新拒否など−外国記者会が批判 - Bloomberg
もう見捨てておけない中国の報道抑圧、米国が政府レベルで対決へ(1/3) | JBpress(日本ビジネスプレス)
そういえばなんかまた中国さんちの報道を巡る問題があったそうで。外国人記者へのビザ更新拒否。最終的に折れたものの、今後も暗黙の圧力として機能していくのは間違いないでしょう。かくしてますます『政府』によって報道の統制管理が進む中国さんち。まぁ私たち日本でも例の特定秘密保護なんちゃらで色々あったりしましたけども、しかしどう見ても、現代世界において「何が秘密かは我々が決める」というやり方を最も強力に押し進め、そしてある程度まで成功しているのが現代中国さんちなわけで。
でも欧米諸国や戦前日本のそれと比較しての批判はあっても、「中国のようにはなってはいけない」という声はやっぱり少なかったよなぁと。

声明は「中国当局のビザ発給拒否や承認遅延が急増しており、取材活動に影響を与えようとしているのは明白だ」と批判。「ニューヨーク・タイムズブルームバーグの記者は今年、1人も年次の居住ビザ更新ができず、異常で説明のない遅延に直面している」と指摘した。両社の特派員は中国指導者の一族の財産について調べた記事を執筆したが、ビザが更新されなければ年末で国外退去の可能性がある。
FCCCが声明を出す前に訪中したバイデン米副大統領は5日、中国が報道の自由を拡大し、中国政府への批判的報道で米報道機関を不当に扱う政策を改める必要があると発言していた。声明によると、これ以外にも外国人記者に対しては、中国の一般市民への取材制限が強化されるなどしている。

>中国が締め付け強化、ビザ更新拒否など−外国記者会が批判 - Bloomberg

ともあれ、こうした中国さんちの人権など知ったことではない「呆れた」やり方について、まぁ私たち日本の立場から――まさに対岸の火事として――批判するのは簡単なんですが、しかしそんな中国国民の情報統制を綺麗にとっぱらってしまうと、まず確実に第一段階としてはあの時の『反日デモ』のような風景が復活してしまうことを考えると、まぁあんまり強く言えなかったりもするんですよね。
――この辺は心底皮肉で、そして愉快なお話だよなぁと。
中国政府がマスコミやインターネットを支配しようとすればするほど、副次効果として「不測の」反日感情の爆発まで抑制される。私たちはそれに喜べばいいのか、それとも悲しめばいいのか。


あなたのココロの隙間を埋めるヘイトスピーチ - maukitiの日記
先日の日記でも、現状ある様々な社会不満に対して、対抗言説の不在により垣根を越えて利用されるのがヘイトスピーチである、というお話を書きましたけども、中国さんちでそれと同じ役割を果たす一つがやっぱり『反日感情』でもあるんですよね。とりあえず何もかも日本が悪い「日本のヒトとモノを追い出せば万事解決する!」なんて。
結局、あの反日感情の爆発が象徴していたのは、中国国内にある無数の不満を――やっぱりそれをやったって真の問題解決には寄与しないにも関わらず――一つに集約させ人々を駆り立てることだったわけで。
それはまぁこれまでの歴史がそうであったように現政権への圧力へと容易に転嫁してしまうわけです。多くの場合でそれは政治支配の強化というよりも、むしろ革命の手段であった。その意味で、そんなヘイトスピーチのような手段の本質的な役割を考えると、中国での反日暴動だって構図は同じなんですよね。その実態は、既存権力・既得権益へのカウンターであるのです。
(まぁ余談ではありますが、だからこそ一部の人たちが懸念しているような日本版ヘイトスピーチ的な言説は、日本における既得権益の権化である自民党はむしろそれに狙われる方なんじゃないかと個人的に思うんですよね。もし将来あるとすれば、自民党政権が墓穴を掘り支持率の低下した際に「無能で」「怠慢な」自民党を倒すためにこそ、という方向から用いられる可能性の方が高いんじゃないかと。そんな世論に乗って登場する自民党よりも更に右寄りな新しい政治家たち、という構図。故にそんな危機を避けるためにこそ、日本でも当然そうした言説は封じられるべきであるし、またその保険として自民党以外の現実的な政権担当能力のある野党が育ってほしいんですが以下略。)


そんな大衆の怒りや不満を理解しない現政府への圧力の結集となりかねないヘイトスピーチ反日感情。それが勝利してしまうと、そんなヘイトスピーチな出自から生まれた新体制が、次にメンドくさいことになるのはまぁ確実であります。つまり、現在の中国さんちのやっている人権などまるで無視した行為について絶対に「正しい」とは言えないものの、しかし同時にそれは私たち日本の、そして中国に進出している日本企業の利益にもなっているんですよね。
現在の一党独裁たる中国共産党政府がやっているのは、(それは私たち最近の日本における中韓蔑視の一部報道などからも無縁ではない)既存の報道機関に対する商業主義による「あることないこと書きまくる扇動的な報道」を抑制させようとする中国政府の指導であるし、同時に政府の監視の目をくぐり抜けることで不測の大規模暴動に発展しかねないあの『アラブの春』のような「インターネットの口コミ動員」の監視を強める努力であります。


そんな自身の政治支配正統性を必死に守ろうとする中国さんちの情報統制が、結果として私たち日本の利益――少なくとも現状維持に、寄与している構図。
いやぁやっぱり皮肉で愉快なお話ですよね。
さて、ならば私たちはそんな中国さんちの「人権弾圧」に一体どういう態度で接すればいいのか?

  • 私たち自身の利益にもなるのだから、そんな他国の弾圧など放っておけばいいのか? 
  • それとも苦しめられている中国の人々を救うために、より一層声をあげるべきなのか?

最近の日本で盛り上がった特定秘密保護法案とそれに関連しての『知る権利』保護の議論ではありますが、国際関係として見るとすごく面白い議論になるんじゃないかと思うんですよね。それが大事なのは理解できますけども、ではそれは一体どこまで敷衍するべきなのか?


もし自分たちさえ良ければそれでいい「余所の国民なんてどうでもいい」なんて態度でいくとしたら、それってまぁものすごく矛盾した態度でありますよね。日本人の基本的権利は守るべきだけれども、しかし中国国民の権利がどうなろうと知ったことではない、なんて。
一方で、少なくとも短中期的には自分たちの不利益になると知りながらも、中国政府のまったく不当なメディア・ネット統制を非難するべきなのか? それってまず確実に反日感情の暴発を招きかねないのに? 



みなさんはいかがお考えでしょうか?