民主主義政治の「可能性」と「危険性」を同時に象徴している風景

その典型例を見て何を思うか。



アメリカ政府機関閉鎖をうらやむ中国人 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
なるほどなーと。まぁ私たちには現在進行中のアメリカの党派対立はどう見てもバカげたお話ではあるんですが、しかし立場を変えればそれは正しく機能していることの証左であるともいえることもなくもなくはなくないかもしれない。

 中国で同じような事態が起きたら、すぐに国全体が大混乱に陥ってしまう。だから絶対に起きないと、多くの人が論じている。とりわけ驚きの声が多かったのは、政府機関閉鎖後も、アメリカの州や自治体レベルの政府は機能し続けていることだ。アメリカ在住のある中国人は、「閉鎖されて何日も経つのに、誰も心配していない」と驚きを露わにした。「連邦政府が閉鎖されても、地方政府は機能し続ける」 19世紀の思想家トクヴィルを引用するように、「アメリカを理解するにはアメリカの自治を理解しなければならない」と言った。

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先日うちの日記でも似たようなことを書いた気がします。

その現代民主主義国家における『取引』へのバランス感が発揮された代表例の一つが、あの米国大統領だったニクソンさんが任期中に辞職に追い込まれたウォーターゲートであるわけです。あのように明らかに現役大統領の責任を問う疑獄であり、その後に憲法に則って職務が副大統領だったフォードさんに委譲されても、しかし大多数のアメリカ国民は(驚き怒りながらも)個人としてはほとんど変わらぬ日常生活を送っていた。それはまぁ世界中の少なくない「非」民主主義国家の人々にとって驚きの風景であったわけです。一国の最高権力者が辞任に追い込まれても、しかし個々の国民の生活にはほとんど影響がなかった、あるいはまるで無いように振る舞った。

健全な『支配の取引』がもたらすもの - maukitiの日記

かつてのウォーターゲートでも、そして今回の致命的な政治危機でも、しかし彼らは多少の影響はあると認めた上で、日常の生活を続けている。まぁこの辺はやっぱり国家と国民との間にある『支配の取引』=民主主義政治がきちんと根付いているアメリカという国の強靭さの象徴でもあるのでしょう。
そして逆に、その関係性が構築できない多くの途上国では、政権が揺らぐとそれだけで市民生活に直接にダメージを受けることになる。


まぁそんなアメリカの政局からとばっちりで致命的な悪影響を受けかねない私たちとしては、ほんともう勘弁してくれ、というお話ではあるんですけど。


ともあれ、あちらの混乱を見ていて思うのは――個人的には共和党の対応の強硬さの方が大きいと思うんですが――現状の共和党の対応について、やっぱりそこそこ「支持されている」という事実が正直どうしようもないよなぁと。各種世論調査などを見ると、アメリカ国民の最大限に多く見積もっても50%、少なく見積もってもおそよ20%程度の人々によって尚共和党が支持されている、という事実が。
つまり、なぜあそこまで彼らが強硬一辺倒でバカげた主張一歩手前にまで踏み込んでいられるのかというと、それはもう身も蓋もなく一部国民からの支持があるからなわけですよね。故に彼らは下院を支配している。ティーパーティのような過激派に支配された共和党を生み出し、そしてそれが(オバマさんの失政とあいまって)実際に伸張してきたのには、そのどうしようもなく覆しようのない事実があるわけで。
それがあまりにも重要な問題=予算問題だからこそ、彼らには妥協ではなく対立のインセンティブが働くことになる。


かくしてそんなアメリカの混乱をして、正しい民主主義の姿だ、と言うのもそこまで間違ったお話ではないんですよね。その光景はあまりにも典型的(で愚か)な民主主義政治の姿であるゆえに。見る人によって希望と絶望がそれぞれ見えてしまうモノなのだろうなぁと。