世はまさに「産油国独裁者たちの時代」のおわり

まるでドミノのようですよね。


「さよなら大統領」 ベネズエラ国民、チャベス氏と涙の別れ 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
【社説】チャベス氏が残した教訓―カリスマ扇動政治家には要注意 - WSJ
ということでチャベスさんまでお亡くなりに。まぁ陰謀論はさて置くとして、病死ということで下手をすれば『政治的に殺された独裁者ブラザーズ』たちよりはまだマシな最後ではあったのかなぁと。少なくとも「アメリカの敵」のままで、「民衆の敵」として死ぬことはなかったから。
個人的にはそんな「反米独裁者」という括りもそうなんですが、「石油を武器とした独裁者」たちがこうして次々と逝ってしまわれるのはまぁ色々興味深い時代だなぁと思うんですよね。


OPECの誕生から始まった、経済的利益だけではない「国際政治上の利益」までをももたらす石油。禁輸や脅しや便宜供与によって政治的利益を追求するという論理的な帰結。産油国たち独自の強大な武器。
――ただ、それは威力があまりに大きい故に、諸刃の剣でもあったわけですよね。威力が大きすぎて、使われた方はシャレにならない。当初それは欧米支配・セブンシスターズ支配のような強者への抵抗として生まれたものでしたが、しかしそのあまりにも強いカードだった故に、少なくない産油国の独裁者たちを勘違いさせてしまうことになった。つまり自分にはパワーがあるのだと。
特にベネズエラさんちなんてどうにかこうにか民主主義体制に辿り着いた所で、その『石油』というあまりにも魅力的な経済的・政治的な武器を手に入れる時代がやってきてしまった。かくしてチャベスさんの権力基盤はより強固になってしまったわけで。
元々ベネズエラといえば、それこそアラブ諸国よりも先にその意識に目覚めた(産油国を団結させて発言力を得ようとした)OPECの起源とも言える国でありました。ちょうど高騰し始めた石油資源のせいで、同時期にやってきた民主主義が損なわれる結果に陥ったのは、タイミングが良いというべきか、悪いというべきか。


といっても色々と内圧が高まっているのはベネズエラだけではありませんよね。特にOPEC――石油輸出国機構の当初メンバーの現状を見ると、まぁ愉快だなぁと思ってしまいます。
イラン、イラククウェートサウジアラビアベネズエラ
上手く欧米諸国と付き合うことでその体制を維持している国や、ボコボコにされるか経済制裁を食らうかしている国などなど。やっぱりどの国も多かれ少なかれ産油国に定番のコースを辿っているのは偶然ではないのでしょう。『悪魔の排泄物』というのも頷いてしまいます。
こうした現状のうち少なくない面で、むしろ石油の価格高騰こそが招いているのはやっぱり皮肉なお話であります。あまりにも高騰しすぎたせいで、彼らは結果として本来国際政治における切り札だった「生産余力」というカードを失い、そして価格高騰によって肥えまくった一部富裕層たちは国内の貧者達の怒りを最早抑えきれなくなっている。


産油国独裁者たちの時代」のおわり。
その一方で彼らが不倶戴天の敵として見ていたアメリカの手に、『シェール革命』を通じて再びその強力なカードが転がり込もうとしている。
やっぱり愉快な歴史のめぐり合わせだなぁと。